無足場工法は違法なのか?労働安全衛生法における法律上の位置づけを解説

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高所ロープ専門の窓ガラス清掃、外壁塗装会社を専門に調査・比較する業界特化型プラットフォーム「オヤズナ」の運営者です。
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「足場を組まずに高所作業をするロープアクセスは、そもそも法律的に問題ないのか」と感じたことはありませんか。

見積書に「無足場工法」と書かれていても、法律上どう位置づけられているのかまでは説明されないことがほとんどです。

結論から言うと、無足場工法(ロープアクセス)は違法ではありません。労働安全衛生規則が定める墜落防止の決められた手順を満たして行われる限り、法律上認められた適法な作業方法です。

この記事では、高所作業を規律する法律の原則から、無足場工法がなぜ例外的に認められているのか、どんな安全対策が義務付けられているのかまで、発注者の視点で整理しました。

 

高所作業の原則は「足場等の作業床の設置」

労働安全衛生規則第518条は、高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合、墜落により労働者に危険が及ぶおそれがあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならないと定めています。

つまり、高所作業における安全対策の原則は「作業床(足場)の設置」です。業種や作業の種類を問わず、まずはこの原則が適用されます。

無足場工法だからといって、この原則そのものが免除されているわけではありません。無足場工法が成り立つのは、この原則に対する例外的な取り扱いが、別途法律で用意されているからです。

なお「作業床」という言葉は、足場の板のような仮設構造物だけを指すわけではありません。厚生労働省の解釈例規では、配管や機械設備等の上に作業床を設けることも、518条が求める「作業床の設置」に含まれるとされています。要するに、労働者が安全に身体を支えられる面を確保することが本質であり、必ずしも「足場」という特定の構造物の設置を指す言葉ではないという点も押さえておくと理解しやすくなります。

「作業床の設置が困難なとき」の代替措置として無足場工法がある

安衛則518条には第2項があり、「作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に墜落制止用器具を使用させる等、墜落による危険を防止するための措置を講じなければならない」と定められています。

ロープアクセスなどの「ロープ高所作業」は、この第2項が想定する代替措置の1つという位置づけです。安衛則第539条の2では、ロープ高所作業を「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、昇降器具を用いて、労働者が当該昇降器具により身体を保持しつつ行う作業」と定義しています。

ここで重要なのは、無足場工法は「足場と対等に選べる2つの選択肢の1つ」ではなく、「足場の設置が困難な場合に限って認められる代替手段」という法律上の立て付けになっている点です。

「作業床の設置が困難」とは、具体的に何を指すのか

では「困難」とはどこまでの状態を指すのでしょうか。厚生労働省の施行通達(平成27年8月5日付基発0805第1号)は、この点について次のような解釈を示しています。

「作業床を設けることが困難なところ」とは、目的とする作業の種類、場所、時間等からみて、足場を設けることが現実的に著しく離反している場合等における作業箇所をいい、単なる費用の増加によるもの等はこれに当たらない。

この解釈を厳密に読むと、「足場よりロープアクセスの方が安いから」という理由だけでは、法律が想定する「困難」の要件を単独で満たすものではないことになります。実務上、ロープアクセスが選ばれる現場は、建物の形状が複雑で足場が組みにくい、狭小地で足場の設置スペースが確保できない、高層建物で足場の設置自体に大きな制約があるなど、物理的・現場条件上の理由が先にあり、コストメリットはその結果として生じているケースが多いと考えられます。発注者としては、業者がどのような現場条件を理由に無足場工法を選んでいるのか、説明を受けておくと安心です。

なぜ2016年にロープ高所作業の安全規制が新設されたのか

ロープ高所作業に関する規定が整備されたのは、平成27年(2015年)の安衛則改正によるものです。この改正の背景には、厚生労働省労働基準局が2013年から2015年にかけて開催した「ブランコ作業における安全対策検討会」での議論がありました。

当時、上部からロープを吊るし身体を保持しながら作業する、いわゆる「ブランコ作業」による死亡災害が、平成19年から平成24年までの6年間でビルメンテナンス業11件、建設業16件、合計27件発生していました。ロープの結び目がほどける、ロープが切れる、安全帯との接続を外したまま作業する、準備作業中や移動中に墜落するなど、原因の大半が墜落によるものでした。

検討会の提言を受けて、労働安全衛生規則にロープ高所作業における危険防止の規定が新設され、ライフラインの設置、作業計画の策定、特別教育の実施などが義務化されました。施行日は平成28年(2016年)1月1日、特別教育の義務化は同年7月1日です。

厚生労働省が公表した死亡災害の内訳を見ると、墜落の要因としては、ロープの結び目がほどけて墜落したケースが約25%、屋上やのり肩での準備作業中・移動中の墜落が約21%、ロープと安全帯との接続を外した状態での墜落が約17%、ロープが切れて墜落したケースが約13%という構成でした。改正後の規定は、これらの要因に直接対応する形で、異なる支持物へのロープの緊結(1本の支持物への依存を避ける)、ライフラインの設置(安全帯との接続を常時確保する)、ロープの損傷・劣化の点検義務といった対策を盛り込んでいます。

2016年の改正より前は、ロープ高所作業そのものを直接規律する規定がなく、安全帯の使用等について法令に基づく指導が行われていたにすぎませんでした。法律上の明確な義務を欠いたまま、死亡災害が繰り返し発生していた状況を受けて規制が整備された、という経緯です。

つまり無足場工法は、無法状態で行われていた作業が法律上「お墨付き」を得たわけではなく、死亡災害が後を絶たない状況を受けて、国が専門家の検討を経た上で、安全対策を義務化してリスクを管理する方向に規制を整備した、という経緯をたどっています。

無足場工法に義務付けられている安全対策

ロープ高所作業を行う事業者には、次のような安全対策が法律で義務付けられています。

メインロープに加え、安全帯(墜落制止用器具)を取り付けるための別系統の「ライフライン」を設置すること。メインロープ・ライフラインともに十分な強度を持ち、損傷・変形・腐食のないものを使用すること。異なる2つ以上の強固な支持物にロープを緊結すること。ロープが切断するおそれのある箇所との接触を避けるための措置(ディビエーション)、それが困難な場合は下方の支持物への再緊結(リビレイ)を行うこと。作業場所の事前調査とそれに基づく作業計画を策定すること。作業指揮者を置き、作業開始前点検を確実に実施すること。そして、従事する労働者に特別教育(学科4時間・実技3時間)を受けさせること。

なお、ビルの外装清掃や法面保護工事以外の作業(橋梁・ダム・風力発電等の点検・調査)では、一定の条件下でライフライン設置の規定が当分の間適用されないという例外も定められています。oyazunaが扱うビル外壁のロープアクセスでは、この例外の対象にはなりません。

資格制度・各法定教育の詳しい内容は、別記事「ロープ高所作業特別教育とフルハーネス特別教育の違いとは?」および「メインロープとライフライン、なぜ2本必要?」で解説しています。

法律そのものではありませんが、建設業労働災害防止協会(建災防)の規程では、高さ5メートルを超える箇所で墜落制止用器具を使用させる場合はフルハーネス型を使用させることを会員に求めています。法律上のフルハーネス型使用義務は原則6.75メートル超からですが、建設業界の自主的な業界基準では、より低い高さから厳しい基準を設けている実態があります。業者によっては、法律の基準より厳しい自社ルールで安全対策を運用している場合もあるため、見積もり時に確認してみるとよいでしょう。

違反した場合、どんな罰則があるのか

安衛則518条の墜落防止措置を講じなかった場合、労働安全衛生法第21条第2項違反として、同法第119条第1号により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。法人に対しては、同法第122条の両罰規定により50万円以下の罰金が科されます。

実際の送検事例として、法面での測量作業中に墜落制止用器具を使用させずに作業させ、労働者が死亡した兵庫県内の測量会社が、安衛法21条2項・安衛則518条2項違反で書類送検されています。また、埼玉県内の事業場が、足場を設置せずに高さ2メートル以上の箇所で作業させたとして安衛則518条違反で送検された事例も、労働局の公表資料で確認できます。

これらの事例に共通するのは、「足場を組まなかったこと」自体が処罰の対象ではなく、「足場を組まない代わりに必要な代替措置(墜落制止用器具の使用等)を講じなかったこと」が違法とされている点です。無足場工法そのものが違法なのではなく、無足場工法で義務付けられた安全対策を怠ることが違法になるという整理を、正確に理解してください。

外壁工事・清掃業界では、元請が現場の作業をさらに下請・孫請けの業者に発注する多重下請構造がよく見られます。この場合、実際にロープアクセスで作業する下請業者の労働者が安全対策を怠っていても、元請業者が特定元方事業者としての統括管理義務(法令基準を満たしているかの確認、関係請負人への法令遵守の指導、悪天候時の作業中止の指示等)を怠っていたとして、元請側の責任が問われることがあります。「下請に任せていた」という説明だけでは、元請の監督責任が免除されるわけではありません。oyazuna掲載企業に発注する際は、実際に作業するのが掲載企業自身か、さらに下請に出すのかを確認しておくと、現場の安全管理体制がより見えやすくなります。

ゴンドラ・高所作業車にも、それぞれの法規制がある

ロープアクセス以外の無足場工法にも、それぞれ専用の法規制が整備されています。

ゴンドラについては、1972年(昭和47年)制定の「ゴンドラ安全規則」により、操作業務に従事する労働者への特別教育、検査証の取得、定期自主検査、作業開始前点検などが義務付けられています。高所作業車についても、作業床の高さに応じて運転資格(10m未満は特別教育、10m以上は技能講習)が定められています。

どの工法も、足場を組まないからといって法規制の外にあるわけではなく、工法ごとに専用の安全規制が整備された上で実施される作業だということが分かります。詳細は「ゴンドラ工法とは?常設型・可搬型の違いと法規制」「高所作業車とは?消防車との違い、10m基準による資格の違い」で解説しています。

発注者として確認しておきたいポイント

「作業床の設置が困難」かどうかの判断は、法律上は労働者を雇用する事業者(施工業者)が行うものであり、発注者が直接判断する立場にはありません。ただし、発注者が何も確認しないまま工法を任せきりにする必要もありません。

ロープ高所作業を行う事業者には、作業場所の事前調査に基づく作業計画の策定が義務付けられています。この作業計画書は、工法選定の理由(現場条件)や安全対策の内容を確認できる具体的な資料になります。契約前に「作業計画書を見せてもらえますか」と尋ねることは、無理な要求ではなく、法律が元々業者に義務付けている資料の提示を求めているだけです。

発注担当者へ
無足場工法の業者を選ぶ際、契約前に次の点を確認しておくと安心です。
  • ロープ高所作業特別教育の受講証明(業者側で保有しているか)
  • 作業場所の事前調査に基づく作業計画書を作成・提示できるか
  • この現場で無足場工法を選んだ具体的な理由(現場条件)を説明できるか
  • 実際に作業するのは元請(その業者)自身か、さらに下請に出すのか
  • 下請に出す場合、元請として現場の安全管理をどう統括しているか

無足場工法を提案された際、「足場より安いから」という説明だけで終わっている場合は、現場条件(足場の設置が困難な具体的な理由)についても一度尋ねてみることをおすすめします。コストだけでなく、建物の形状や立地といった現場条件に基づいて工法が選定されているかどうかは、安全管理の姿勢を見極める手がかりになります。

まとめ

無足場工法(ロープアクセス)は違法な作業方法ではなく、労働安全衛生規則が定める墜落防止措置を満たして行われる限り、法律上認められた適法な作業です。

ただし、無足場工法は「足場と対等に選べる2つの選択肢の1つ」ではなく、「足場の設置が困難な場合に認められる代替手段」という法律上の立て付けになっています。義務付けられた安全対策(ライフラインの設置・作業計画の策定・特別教育の受講等)を満たさずに行われた場合は、事業者に罰則が科される違法行為になります。

発注者としては、業者が法定の資格・安全対策を満たしているかを確認し、工法選定の理由についても説明を受けておくことが、安心して無足場工法を依頼するための土台になります。「安いから」という説明だけで終わらせず、現場条件に基づく工法選定の根拠と、法定の安全対策の実施状況を、契約前にあわせて確認する習慣をつけておきましょう。

よくある質問

Q. ロープアクセス(無足場工法)は法律違反ではないのですか?
A. 違法ではありません。労働安全衛生規則が定める安全対策(ライフライン設置・作業計画の策定・特別教育の受講等)を満たして行われる限り、法律上認められた作業方法です。

Q. 「足場が組めないから無足場工法」という説明は正しいのですか?
A. 法律上、ロープ高所作業は「作業床の設置が困難な場合」の代替措置として位置づけられています。厚生労働省の通達では、この「困難」は現場条件によるものを指し、単なる費用の増加は含まれないとされています。

Q. 無足場工法の業者が安全対策を怠っていた場合、どうなりますか?
A. 事業者は労働安全衛生法違反として、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処されます。法人にも同額の罰金が科される両罰規定が設けられています。

Q. 発注者も法律上の責任を問われることはありますか?
A. 墜落防止措置の実施義務は基本的に労働者を雇用する事業者(施工業者)が負うものです。発注者が直接罰則の対象になるわけではありませんが、業者の安全管理体制を確認せずに発注した結果、重大事故が起きれば、取引先選定の責任を問われかねません。業者選定時に資格・安全対策の確認を行うことが望ましいといえます。

Q. 特別教育を受けていない作業員が施工していたらどうなりますか?
A. 事業者が特別教育を実施せずに労働者をロープ高所作業に従事させた場合、労働安全衛生法59条・119条1号違反となり、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。契約前に受講証明の提示を求めておくと、未受講のまま作業に入るリスクを避けやすくなります。

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