高所作業は風速何メートルで中止?ロープアクセス・ゴンドラ・高所作業車・足場の基準を比較

オヤズナ編集部代表
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オヤズナ編集部代表

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高所ロープ専門の窓ガラス清掃、外壁塗装会社を専門に調査・比較する業界特化型プラットフォーム「オヤズナ」の運営者です。
高所ロープ会社での勤務経験を有し、現場視点と業界理解をもとに情報発信を行っています。また、労働安全衛生法に基づく高所作業関連講習を修了しており、安全管理および高所作業に関する基礎知識を有しています。
オヤズナでは、各社の公式サイト・公開情報・施工実績情報をもとに、「安全性(保険加入・資格情報)」「実績(創業年数・施工事例)」「対応力(エリア・階数・緊急対応)」などの独自基準でデータを整理・比較。これらのオリジナルデータベースをもとに、公平性と透明性を重視した記事制作および情報監修を行っています。

「本日は強風のため作業を見合わせます」

ロープアクセスやゴンドラでの高所作業を発注していると、現場からこうした連絡を受けることがあるのではないでしょうか。

工期への影響は気になりますが、「本当に止めるべき風だったのか」「法律でそう決まっているのか」を発注者側から確かめる方法は、意外と知られていません。

この記事では、ロープアクセス・ゴンドラ・高所作業車・足場という4つの工法それぞれについて、悪天候時に作業を中止する法的根拠を条文レベルで確認し、現場でよく聞く「風速10m以上で中止」という数値の正体を整理します。4工法を横断して比較した記事は、調査した範囲ではほとんど見つかりませんでした。

 

結論:4工法とも中止の規定はあるが、数値基準は条文に書かれていない

最初に結論です。ロープアクセス・ゴンドラ・高所作業車・足場のいずれにも、法令上「強風、大雨、大雪等の悪天候のため危険が予想されるときは作業を行わせてはならない」という趣旨の規定があります。

ただし、どの条文にも「風速何メートル以上」という具体的な数値は書かれていません。現場で広く使われている「10分間平均風速10m/s以上」という基準は、条文そのものではなく、行政が条文の意味を補足するために示した解釈例規(通達)によるものです。

結論
  • ロープアクセス・ゴンドラ・高所作業車・足場は、いずれも「悪天候のため危険が予想されるときは作業を行わせてはならない」という趣旨の規定がある
  • ただし、条文そのものに「風速何メートル以上」という数値は書かれていない
  • 「強風=10分間平均風速10m/s以上」という数値は、条文を補足する行政の解釈例規(通達)によるもの
  • 4工法のうち、専用の悪天候条文を持つのはゴンドラ安全規則(第19条)のみ

足場:組立て等の専用規定と、作業全般に及ぶ一般規定の二重構造

足場については、以前の記事「足場の悪天候対応と点検義務、倒壊したら誰の責任になるかを解説」で詳しく解説しました。ここでは要点だけ振り返ります。

足場には2つの根拠規定があります。労働安全衛生規則(安衛則)第564条第1項第3号は、つり足場・張出し足場・高さ2m以上の足場の「組立て・解体・変更」作業に特化して、悪天候時の中止を定めています。これに加えて、安衛則第522条が「高さ2m以上の箇所で行う作業」全般について、同じ趣旨の規定を置いています。

足場の組立て作業そのものだけでなく、足場の上で行う塗装・清掃・調査といった作業全般にも、522条の考え方が及びます。

高所作業車:専用の悪天候条文は存在しない

以前の記事「高所作業車とは?消防車との違い、10m基準による資格の違いを解説」では、高所作業車に関する搭乗制限・運転資格等の専用規定を取り上げました。今回あらためて条文を確認してみると、高所作業車には足場の564条のような「悪天候時の作業禁止」に特化した専用条文が見当たりません。

高所作業車を使った作業も、結局は「高さ2m以上の箇所で行う作業」の一種として、前述の安衛則522条という一般規定でカバーされています。4工法の中で唯一、悪天候に関する専用規定を持たない工法です。

ロープアクセス(ロープ高所作業):専用規定にも悪天候条項はない

2016年に新設されたロープ高所作業の専用規定(安衛則第539条の2〜9、詳細は「メインロープとライフライン、なぜ2本必要?」で解説)には、ライフラインの設置義務・強度基準・作業計画の策定など、細かな規定が並んでいます。

ところが、この専用規定の中に「悪天候時の作業禁止」の条文は含まれていません。厚生労働省(消防庁経由)が公開している解説パンフレットには、「今回新たに施行される規定以外にも、ロープ高所作業を行うときは安衛則第522条(悪天候時の作業の禁止)・第523条(照度の保持)・第537条(物体の落下による危険の防止)・第530条(立入禁止)の規定が適用されます」と明記されています。ロープ高所作業も高所作業車と同じく、522条の一般規定でカバーされていることが、ここから確認できます。

実務上、ロープアクセスは4工法の中でもっとも風の影響を受けやすい工法です。作業者の身体がロープに吊られた状態にあり、足場のような面的な遮蔽物もないため、横風を受けると身体や資材が振れ、壁面への接触や資材の落下につながりやすいからです。業界知識ベースでも「天候に弱い」というロープアクセスの弱点はしばしば言及されますが、その根拠が法令上の専用規定ではなく現場の実務感覚に基づくものだという点は、意外と整理されていません。法令上の根拠は一般規定にとどまりますが、現場の安全管理としてはもっとも慎重な風速判断が求められる工法だと言えるでしょう。

ゴンドラ:4工法で唯一、専用の悪天候条文を持つ

以前の記事「ゴンドラ工法とは?常設型・可搬型の違いと法規制」で取り上げたゴンドラ安全規則には、第19条として次の専用条文があります。

「事業者は、強風、大雨、大雪等の悪天候のため、ゴンドラを使用する作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を行なってはならない」

条文の構造自体は足場・高所作業車・ロープアクセスと同じで、数値基準はありません。ただしゴンドラだけは、安衛則本体ではなく独立した「ゴンドラ安全規則」という専用の規則の中にこの禁止規定を持っています。ゴンドラを運用する企業(日本ビソー社の公式FAQ等)も、この第19条を根拠に「強風=10分間平均風速10m/s以上」という基準を案内しています。

工法専用の悪天候条文適用される一般規定
足場安衛則564条1項3号(組立て・解体・変更に特化)安衛則522条(高さ2m以上の作業全般)
高所作業車なし安衛則522条のみ
ロープ高所作業なし(539条の2〜9に悪天候条項は含まれない)安衛則522条のみ
ゴンドラゴンドラ安全規則19条(専用条文があるため該当なし)

「風速10m/s」という数値は、どこから来ているのか

ここまで見てきたとおり、4工法のどの条文にも具体的な風速の数値は書かれていません。それでも現場で「10m/s」という数値が広く使われているのは、行政が条文の「強風」という言葉の意味を補足するために発した解釈例規(通達)があるからです。

この解釈例規は、強風を「10分間の平均風速が毎秒10メートル以上の風」、大雨を「1回の降雨量が50ミリメートル以上の降雨」、大雪を「1回の降雪量が25センチメートル以上の降雪」と定義しています。瞬間風速が毎秒30メートルを超える風は「暴風」として別に扱われます。

調査を通じて気になった点が一つあります。この解釈例規の通達番号について、北海道労働局が公開する資料は「昭和34年2月18日付け基発第101号」を出典として挙げていますが、鳥取労働局が公開する資料は「昭和46年4月15日付け基発第309号」を出典として挙げています。定義の内容(10m/s等の数値)はどちらも同一ですが、根拠となる通達番号の表記が公的機関の資料間で揺れているのです。どちらの番号が最新・正式なのかは今回の調査では特定できませんでした。「10m/s」という数値自体は複数の公式資料で一致していますが、出典番号には資料ごとの揺れがある、という点は正直にお伝えしておきます。

この数値はあくまで「強風」という言葉の目安であって、「10m/sを下回れば安全」という意味ではありません。解釈例規は「強風、大雨、大雪等の悪天候のため」という表現について、実際にその天候になった場合だけでなく、気象注意報・気象警報が発表されて悪天候になることが予想される場合も含む、としています。降り始めや吹き始めを待つ必要はなく、予報段階で中止を検討するのが正しい運用です。

「10分間平均風速10m/s」がどの程度の風かというと、気象庁の風の強さの解説では、大きな木の枝が揺れる・電線が鳴る・傘がさしにくい、といった状態が目安として示されています。地上で傘がさしにくいと感じる程度の風でも、高所で作業をしている人にとっては身体や資材を揺らす十分な強さになります。

平均風速と瞬間風速の違い

もう一つ注意したいのは、「10m/s」が10分間の平均風速であり、瞬間的な突風(瞬間風速)とは別の指標だという点です。平均風速が基準未満でも、瞬間的にはその1.5〜3倍程度の突風が吹くことがあり、「平均では基準以下だから大丈夫」という判断は危険です。特にロープアクセスのように身体が宙に浮く工法では、瞬間的な突風そのものが転倒・接触のリスクになります。

実は「クレーン作業」も同じ数値を使っている

ここまで高所作業4工法を見てきましたが、「10分間平均風速10m/s以上で中止」という基準は、実はクレーン作業にも使われています。厚生労働省が公開する移動式クレーンの教本には「移動式クレーン作業においては、10分間の平均風速が10メートル/秒以上の場合は、作業を中止する」と明記されており、クレーン等安全規則第74条の3(強風時の作業中止)も、高所作業4工法と同じ「強風のため、危険が予想されるときは作業を中止しなければならない」という条文構造になっています。

クレーン則の条文をよく見ると、高所作業4工法の「強風、大雨、大雪等の悪天候」という表現とは違い、クレーン則31条の2・74条の3は「強風のため」としか書かれておらず、大雨・大雪は中止要件に含まれていません。揚重物を吊り上げる作業特有の事情、つまり風による荷の振れが最大のリスクであることを反映した条文設計なのでしょう。

クレーン則にはもう一つ別の数値基準があります。屋外に設置された走行クレーンについて、瞬間風速が毎秒30メートルを超える風が吹くおそれがあるときは、逸走防止装置を作動させるなどの対策を講じる義務(クレーン則31条)です。これは「作業を中止する基準」ではなく「クレーン自体が風で飛ばされないようにする基準」で、目的がまったく違います。混同されやすい2つの数値(10m/sと30m/s)は、「作業中止」と「機材の保護」という別の目的で設けられている、と覚えておくと整理しやすくなります。

区分基準対象・目的
強風10分間の平均風速が毎秒10m以上足場・高所作業車・ロープ高所作業・ゴンドラ・移動式クレーン等、高さ2m以上の作業全般の中止判断
大雨1回の降雨量が50mm以上同上
大雪1回の降雪量が25cm以上同上
暴風瞬間風速が毎秒30mを超える風屋外クレーン・デリック等の逸走防止措置(作業中止基準ではない)

※「強風」等の数値は解釈例規(通達)による目安。出典となる通達番号は資料によって「昭和34年基発第101号」「昭和46年基発第309号」の両方が使われており、本文で詳しく解説しています。

悪天候のあとの点検義務も、工法によって対象が違う

悪天候が収まったあと、すぐに作業を再開してよいわけではありません。労働安全衛生法関係法令は、強風・大雨・大雪等の悪天候のあと(または中震以上の地震のあと)に点検をしなければならない作業を個別に定めています。ここにも工法ごとの違いがあります。

足場については、安衛則第567条第2項が、悪天候後または組立て・一部解体・変更の後に、点検者を指名して9項目を点検することを義務付けています(詳細は前述の記事35で解説)。ゴンドラについては、ゴンドラ安全規則第22条第2項が悪天候後の点検を義務付けています。

都道府県労働局が公開する関係法令の一覧資料を確認したところ、高所作業車とロープ高所作業は、この「悪天候後に点検しなければならない作業」の一覧に含まれていませんでした。ロープ高所作業には天候にかかわらずその日の作業開始前に毎回点検する義務(安衛則第539条の9)があるため、結果的に悪天候の翌日も点検されることになります。一方、高所作業車には、こうした悪天候に紐づいた専用の点検義務規定が見当たりません。足場・ゴンドラのように「組み立てられた構造物が風雨で歪んだり緩んだりしていないか」を悪天候後に重点的に確認するという発想自体が、その日ごとに別の場所へ移動する機械である高所作業車には当てはまりにくい。そんな工法の性質の違いが背景にあるのでしょう。

発注担当者へ
悪天候時の対応について、契約前に次の点を確認しておくと安心です。
  • 作業中止の判断基準(風速の目安)が社内規程や作業計画に明文化されているか
  • 気象注意報・警報の段階でどう対応するか、判断の責任者が決まっているか
  • 悪天候で中止した場合の工期・費用の扱いが契約書に記載されているか
  • 悪天候のあと、作業再開前にどのような点検を行うか

発注者として押さえておきたい実務ポイント

ここまでの内容を踏まえ、発注者として確認しておくとよい点を整理します。

第一に、「風速10m/s」はあくまで行政解釈が示す目安で、法律の条文に書かれた絶対的な基準ではありません。現場の事業者は、この目安を参考にしつつ、作業内容・建物の形状・足場や資材の状況に応じて、自社の判断で中止するかどうかを決めています。「基準に達していないから作業を続けるべきだ」と発注者側から現場に圧力をかけるような対応は、安全配慮義務の観点からも避けてください。

第二に、ロープ高所作業の場合は作業計画の策定が法令上の義務で、その計画には中止基準や緊急時対応を明記するのが望ましいとされています。契約前に、こうした作業計画がきちんと準備される業者かどうかを確認することは、発注者にとって有効なチェックポイントになります。

第三に、天候による作業中止で工期が延びることは、安全を優先した結果としてある程度やむを得ません。台風や季節的な強風が多い時期に工事を発注するなら、あらかじめ工期にゆとりを持たせておくことも、トラブルを避けるための実務的な工夫です。

第四に、台風のように数日前から接近が予想される場合は、当日の風速だけで一回限りの判断をするのではなく、数日単位のタイムラインで準備を進めるのが安全側の運用です。注意報・警報の発表状況を確認しながら、資材の固定・飛散防止ネットの一時撤去・作業員の退避といった対応を前倒しで進める業者なら、悪天候時の対応力という点でも安心して任せやすいでしょう。

よくある質問

Q. 「風速10m以上で作業中止」という基準は、どの工法にも法律で決まっているのですか?
A. いいえ。条文自体に数値基準はありません。ロープアクセス・高所作業車・足場・ゴンドラのいずれも「強風、大雨、大雪等の悪天候のため危険が予想されるときは作業を行わせてはならない」という趣旨の規定があるのみで、「10分間平均風速10m/s以上」という数値は、行政が示した解釈例規(通達)による目安です。

Q. 4つの工法のうち、天候に一番弱いのはどれですか?
A. 法令上の根拠の強さではなく実務の話として、ロープアクセスがもっとも風の影響を受けやすい工法です。身体がロープに吊られた状態で、足場のような面的な遮蔽物もないため、横風による振れが作業者自身の安全に直結しやすいからです。

Q. 強風で作業が中止になり工期が延びた場合、追加費用を請求されますか?
A. 悪天候による中止は法令が求める安全確保のための措置であり、業者の都合による延期とは性質が違います。追加費用の扱いは契約内容によって異なるため、契約前に天候による工期変更の取り扱いを確認しておくことをおすすめします。

Q. 気象庁の注意報が出ているだけで、まだ雨も風も強くないのに中止するのは過剰ではありませんか?
A. 過剰ではありません。行政の解釈例規は「悪天候のため」に、実際に悪天候となった場合だけでなく、気象注意報・警報が発表されて悪天候になることが予想される場合も含むとしています。予報段階で中止を検討するのは、法令が想定している通常の運用です。

 

工法ごとの基本的な特徴や向いている建物については「ロープアクセス・ゴンドラ・高所作業車・足場、高所作業4工法はどう選ぶ?」でも整理しています。業者選定の際に確認したい資格・届出の全体像は「高所作業を発注する前にチェックしたい資格・届出一覧」も参考にしてください。

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