足場の悪天候対応と点検義務、倒壊したら誰の責任になるかを解説

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高所ロープ専門の窓ガラス清掃、外壁塗装会社を専門に調査・比較する業界特化型プラットフォーム「オヤズナ」の運営者です。
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「強風の日、足場はどうなっているのだろう」
「もし足場が倒れたら、誰の責任になるのだろう」

外壁塗装や大規模修繕で足場を組んでいる建物のオーナー・管理組合なら、一度は気になったことがあるのではないでしょうか。実はこの疑問、労働安全衛生法令で細かくルール化されています。

この記事では、足場の悪天候時の扱いと点検義務、そして万一の倒壊時の責任の所在を、条文に沿って整理します。足場の期間・費用・トラブルといった実務的な疑問は、次の記事で扱っています。

外壁塗装の足場、期間・費用・トラブルまで疑問をまとめて解説

悪天候時は足場の組立て作業自体を中止する義務がある

労働安全衛生規則第564条は、つり足場・張出し足場、または高さ2メートル以上の足場の組立て・解体・変更の作業について、事業者が講じるべき措置を定めています。その3号に、次の規定があります。

「強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想されるときは、作業を中止すること」

これとは別に、労働安全衛生規則第522条は、高さ2メートル以上の場所で行う作業全般について、同様に悪天候時の作業禁止を定めています。

つまり足場の組立て作業そのものだけでなく、足場の上で行う塗装・清掃・調査といった作業全般にも、この考え方が及びます。

条文の文言自体は「危険が予想されるときは、当該作業を行わせてはならない」というもので、特定の数値を上回ったら自動的に中止、という機械的な規定ではありません。現場の状況を踏まえた事業者の判断が前提になっている点は、意識しておくとよいでしょう。

区分基準
強風10分間の平均風速が毎秒10メートル以上
大雨1回の降雨量が50ミリメートル以上
大雪1回の降雪量が25センチメートル以上
中震震度4以上

出典: 昭和34年2月18日付け基発第101号(解釈例規)

ここで気になるのが、「強風」とは具体的にどのくらいの風速を指すのかという点です。条文自体には数値が書かれていませんが、昭和34年2月18日付けの解釈例規(基発第101号)で、次のように定義されています。

  • 強風: 10分間の平均風速が10メートル毎秒以上
  • 大雨: 1回の降雨量が50ミリメートル以上
  • 大雪: 1回の降雪量が25センチメートル以上
  • 中震: 震度4以上

瞬間風速ではなく「10分間の平均風速」である点には注意が必要です。突風が一瞬吹いただけでこの基準に達するわけではなく、ある程度持続した強い風が基準になっています。

悪天候・地震のあとは、使用中の足場も点検が必要

足場の組立て作業を中止するだけでは終わりません。労働安全衛生規則第567条第2項は、強風・大雨・大雪等の悪天候、中震以上の地震、または足場の組立て・一部解体・変更の作業のあとに、その足場で作業を行う場合には、点検者を指名して、作業開始前に次の9項目を点検することを義務付けています。

No点検事項
1床材の損傷、取付け及び掛渡しの状態
2建地、布、腕木等の緊結部・接続部・取付部の緩みの状態
3緊結材及び緊結金具の損傷及び腐食の状態
4足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無
5幅木等の取付状態及び取り外しの有無
6脚部の沈下及び滑動の状態
7筋かい、控え、壁つなぎ等補強材の取付状態及び取り外しの有無
8建地、布及び腕木の損傷の有無
9突りょうとつり索との取付部の状態及びつり装置の歯止めの機能

出典: 労働安全衛生規則第567条2項1号〜9号

異常が見つかった場合は、直ちに補修しなければなりません。そして、この点検の結果と点検者の氏名は記録し、その足場を使用する作業が全て終了するまでの間、保存しておく必要があります(同条3項)。

行政の実務資料では、点検記録の様式として「工事名」「工期(契約工期ではなく実際の工期)」「点検者職氏名」「点検日」「点検実施理由(悪天候後・地震後・足場の組立て後・一部解体後・変更後のいずれか、その詳細)」「足場等の用途・種類・概要」といった項目に加え、点検事項ごとの点検内容・良否・是正内容・是正確認を記録する様式例が示されています。

是正の確認についても、点検者本人だけでなく、管理者や事業者など別の立場の人が行うことが望ましいとされています。

なお、これとは別に、足場を使う日は必ず、その日の作業を開始する前に「墜落防止設備の取り外し・脱落の有無」を点検する義務もあります(同条1項)。悪天候後の9項目点検は、この日常点検にさらに上乗せされる、より踏み込んだ内容です。

つり足場は「毎日」点検が必要

ここまで紹介した9項目点検は、あくまで悪天候・地震のあと、または足場の組立て・解体・変更のあとに求められるものです。

しかし、つり足場(ワイヤーロープ等で吊り下げるタイプの足場)については、事情が異なります。労働安全衛生規則第568条は、つり足場で作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、9項目のうち5項目(床材の損傷、緊結部の緩み、緊結材の腐食、墜落防止設備の脱落、突りょうとつり索の取付部の状態)を点検することを義務付けています。

つまり、通常の足場は「悪天候等のあと」がトリガーになるのに対し、つり足場は天候にかかわらず「毎日」の点検が求められる、より厳格な扱いです。

ワイヤーロープで吊られているという構造上、劣化や取付け不良がそのまま落下事故に直結しやすいことが背景にあると考えられます。

点検を担う「足場の組立て等作業主任者」

労働安全衛生規則第565条により、足場の組立て・解体・変更の作業では、所定の技能講習修了者から作業主任者を選任しなければなりません。

この作業主任者には、材料に欠点がないかの点検、墜落制止用器具・保護帽が正常に機能するかの点検、作業方法や労働者の配置の決定、作業中の使用状況の監視といった職務が課されています(同第566条)。

悪天候後の9項目点検についても、実施者には足場の組立て等作業主任者や元方安全衛生管理者など、一定の知識・経験を持つ人を指名することとされています。厚生労働省(北海道労働局)の資料では、「足場の組立て等作業主任者能力向上教育」を受講しているなど、十分な知識・経験を有する者から指名することが望ましいとされています。

日々の点検が、資格を持たない人の判断だけで済まされていないかどうかも、業者の安全管理体制を見極めるポイントになります。

能力向上教育は、資格を取って終わりにしないための仕組みです。技術基準や事故事例は年々更新されていくため、現場の第一線で足場の安全を判断する作業主任者にも、継続的な学び直しの機会が用意されているということです。

5メートルという境目:特別教育と作業主任者の住み分け

足場の組立て・解体・変更に関わる資格には、実はもう1段階、「足場の組立て等特別教育」があります。

この特別教育には高さの規定がなく、足場の高さにかかわらず、組立て・解体・変更の作業に従事する全ての作業者が受講する必要があります。

一方、「足場の組立て等作業主任者」の選任が義務付けられるのは、つり足場・張出し足場を除き、高さ5メートル以上の構造の足場に限られます。

つまり、高さ5メートル未満の現場では、作業主任者の選任義務そのものはありません。

ただし厚生労働省の資料では、高さ5メートルに満たない足場の組立て等の作業であっても「作業指揮者」を指名し、作業主任者の職務に準じた事項を行わせることが望ましいとされています。「作業主任者がいないから低い足場は安全管理が緩い」というわけではなく、規模に応じた指揮体制が求められているということです。

強風で足場が崩れたら、誰の責任になるのか

発注者にとって一番気になるのは、実際に足場が倒壊して被害が出た場合、誰が責任を負うのかという点でしょう。ここでは民法上の考え方を整理します。

請負契約の原則として、民法716条は「注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない」と定めています。

つまり、足場を組んだ施工業者(請負人)が起こした事故について、発注者(注文者)が当然に責任を負うわけではありません。

ただし、同条には「注文又は指図についてその注文者に過失があったとき」はこの限りでないという但し書きがあり、無理な工期や施工方法を発注者側が指示していた場合は、話が変わってきます。

一方で、足場が「土地の工作物」に該当すると考えられる場合は、民法717条の工作物責任も関わってきます。この条文では、工作物の設置・保存に瑕疵があり他人に損害が生じたとき、まず工作物の「占有者」(通常は足場を実際に使用・管理している施工業者)が賠償責任を負い、占有者が損害防止に必要な注意を尽くしていたと認められる場合は、「所有者」(建物の所有者、つまり発注者側)が無過失責任を負うと定められています。

つまり、通常は施工業者側の責任として処理される場面が多いものの、施工業者が適切な注意義務を尽くしていたと判断されると、最終的な責任が建物所有者側に及ぶ可能性もゼロではない、という二重の構造になっています。

だからこそ発注者にとっても、業者が悪天候時の中止基準・点検義務を確実に守っているかは、他人事ではないというわけです。

ここでいう「工作物の占有者が損害防止に必要な注意をしたとき」の判断材料になるのが、まさにここまで見てきた点検記録です。悪天候のたびに規定どおりの点検を行い、記録を残していたという事実があれば、それは施工業者が注意義務を尽くしていたことを示す証拠になります。

逆にいえば、点検記録が存在しない場合、施工業者・発注者のどちらにとっても、いざというときに「注意を尽くしていた」と主張する材料が乏しくなってしまいます。

点検の中身は「協議して定める」ことになっている

法令が定める9項目は、あくまで点検すべき事項の一覧であり、それぞれをどのような手順・基準で確認するかまでは細かく規定していません。

北海道労働局の資料では、点検の具体的な内容について、事業者だけでなく元請け・仮設機材メーカー等と協議して定めることが望ましいとされています。

実際の現場では、建設業労働災害防止協会などの業界団体が作成しているチェックリストを参考にしながら、各現場の足場の種類(わく組足場・単管足場・つり足場等)に応じたチェックリストを個別に用意するのが一般的な運用です。

つまり、「法令の9項目さえ満たしていればよい」という最低ラインの発想ではなく、元請けや仮設機材メーカーの知見も取り入れながら、現場ごとに実効性のある点検内容へ落とし込むことが期待されているということです。

発注者としては、業者が使っているチェックリストが、その現場の足場の種類に合わせて個別に作られたものか、それとも他の現場と使い回しの汎用フォーマットかを尋ねてみるのも、一つの見極め方です。

発注担当者へ
足場を組む業者を選ぶ際、次の点を確認しておくと安心です。
  • 強風・大雨・大雪・地震のあと、点検を行ってから作業を再開しているか
  • 点検結果の記録を、工事終了まで保存する運用になっているか
  • 足場の組立て等作業主任者が選任され、現場で職務を果たしているか
  • 台風接近等が事前に予想される場合、作業中止の判断を誰がどう下すか、契約前に確認できているか

まとめ

足場は、悪天候のたびに「作業を中止する義務」と「使用前に点検する義務」という2つの法定ルールで守られています。

「強風」の基準が風速10m/s以上という具体的な数値で解釈例規に示されている点、そして地震のあとも点検対象になる点は、意外と知られていません。

さらに、通常の足場とつり足場で点検頻度が異なること、高さ5メートルを境に作業主任者の選任義務が変わること、この2点も実務上見落とされがちなポイントです。

「足場がある=安全」ではなく、「決められたタイミングで、決められた項目を、決められた人が点検している状態」こそが法令の求める安全であることが、条文を追っていくと見えてきます。

万一の倒壊事故では、請負契約の原則として施工業者側が責任を負う場面が多いものの、工作物責任の構造上、建物所有者側の責任に発展する可能性もあります。

悪天候後の点検を実施した証拠を業者側が残しているかどうかは、発注者自身の備えにもつながります。台風シーズンや大雪が予想される時期に足場を組む工事を発注する際は、契約前に「悪天候時はどう判断し、誰が点検するのか」を確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。

よくある質問

Q. 足場の作業を中止すべき風速の目安は?
A. 法令の条文自体に数値はありませんが、昭和34年の解釈例規で「10分間の平均風速が10メートル毎秒以上」が「強風」の目安として示されています。瞬間風速ではなく、持続的な平均風速である点に注意が必要です。

Q. 悪天候のあと、足場はどのように点検されますか?
A. 点検者を指名し、床材の損傷、緊結部の緩み、墜落防止設備の脱落など9項目を作業開始前に点検します(労働安全衛生規則第567条2項)。異常があれば直ちに補修し、点検結果は工事終了まで記録・保存する義務があります。

Q. 地震のあとも足場の点検は必要ですか?
A. 必要です。解釈例規では「中震(震度4)以上」の地震のあとも、悪天候後と同じ9項目の点検対象とされています。

Q. 強風で足場が崩れて被害が出た場合、発注者にも責任はありますか?
A. 請負契約の原則では、事故の責任は施工業者側(請負人)が負うのが基本です(民法716条)。ただし足場が「土地の工作物」とみなされる場合、施工業者(占有者)が十分な注意を尽くしていたと認められると、建物所有者(発注者)側が無過失責任を負う可能性があります(民法717条)。

Q. 高さ5メートル未満の足場なら、資格を持つ人がいなくても組み立てられますか?
A. 作業主任者の選任義務こそありませんが、「足場の組立て等特別教育」は高さにかかわらず全ての組立て・解体・変更作業者に必要です。無資格での作業は高さを問わず認められていません。

Q. つり足場と通常の足場で、点検の頻度は違いますか?
A. 違います。通常の足場は悪天候・地震・組立変更のあとに点検すれば足りますが、つり足場は天候にかかわらず、作業を行う日は毎回、作業開始前の点検が義務付けられています。

Q. 点検記録はどのように残されていますか?
A. 決まった様式はありませんが、工事名・点検日・点検実施理由・点検者氏名に加え、9項目それぞれの点検内容・良否・是正内容を記録する様式が一般的です。業界団体や仮設機材メーカーが作成した様式を、各現場の足場の種類に合わせて使うのが実務上の標準的な運用とされています。

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