工場や倉庫、鉄骨造のビルで、壁際の天井にしみが出た。雨の翌日に、窓まわりが濡れている。外壁はALCパネルだと聞いているので、パネルの割れから雨が入っているのだろうか。そう考えて業者を呼んだものの、「どこから入っているのか」の説明が曖昧なまま、見積もりだけが先に届く。そのような経験はありませんか。
ALCの外壁の雨漏りは、入口がパネルの表面だけとは限りません。パネル同士の目地、他の部材との取り合い部、屋根まわりも、疑ってください。ALCパネルは吸水しやすい材料です。水の入口を特定しないまま塗装や目地の打ち替えを行うと、費用をかけても止まらないことが起こりえます。
ALC協会の技術資料「ALCパネルの仕上げおよび防水」(第9版)と公式Q&Aを手がかりに、水の入口になりやすい箇所を整理します。そのうえで、雨漏り調査を依頼するときに業者へ伝えるべき情報と、見積書で確認したい項目を示します。調査費用や補修費用の具体的な金額は、協会資料に記載がなく、根拠となる一次資料も確認できなかったため載せていません。
この記事でわかること
- ALC外壁で「水の入口」になりやすい5つの箇所
- 雨水と結露を切り分けて考える理由
- 調査の依頼時に、業者へ伝えておきたい情報
- 見積書で確認したい項目
ALCは水を吸う。雨水が入ると何が起きるのか
ALCパネルは水を吸いやすい、というのがALC協会の基本的な説明です。吸水・吸湿への対策は設計・施工の段階で必要とされ、外部に面する面の仕上げには防水性の高いものが求められています。
同じ協会の技術資料によれば、仕上げ材の防水性能が落ちると、雨水がパネルの内部に入り込み、耐久性を損なうことがあるとされています。仕上げや防水が不適切な場合に生じる恐れのある不都合として、外壁では、漏水とALCパネルの耐久性低下の原因になること、寒冷地では凍害の原因になることが挙げられています。
雨漏りは、室内のしみや濡れとして現れますが、問題は室内側にとどまりません。水が入り続けるほど、パネルの耐久性にも影響するという構造です。入口を早く特定する理由は、この点に尽きます。
水の入口になりやすい5つの箇所
協会資料から、水の入口の候補として確認できる箇所を、5つに分けて整理します。資料は新築・改修の設計施工の注意点として書かれたものです。自社の建物の雨漏りの原因を、これらだけで断定するものではありません。調査で現地を確認する際の、候補の目安として使ってください。
入口1:仕上げ材(塗膜)の防水性能の低下
最初に疑うのは、外壁を覆っている仕上げ材です。協会資料は、外壁面には防水性のある仕上げが必要で、仕上げ材の劣化や傷みに応じた補修・改修が必要としています。
仕上げの不具合の原因として、資料は、下地の乾燥が不十分な状態で施工すると、塗膜の付着性が下がり、ひび割れ・ふくれ・はがれの原因になることを挙げています。また、下地調整塗材が省略されたり塗布が不十分だったりして塗膜の連続性が確保されないと、パネル自体の耐久性が低下する恐れがあるとしています。過去の塗装の施工内容が、いまの雨漏りに影響している可能性も考えられます。
塗装の仕様の考え方はALC外壁の塗装、どの塗料を選ぶかで整理しています。
入口2:パネル間の目地のシーリング
雨がかりになるALCパネルの目地には、水密性・気密性を確保するため、パネル相互間およびパネルと他部材との取り合い部にシーリング材を充填するよう、資料は求めています。
目地のシーリングが傷みやすい理由も、資料から読み取れます。縦壁ロッキング構法と横壁アンカー構法の目地は、動きを伴う目地(ワーキングジョイント)になります。そのため、よりグレードの高いポリウレタン系や変成シリコーン系のシーリング材が望ましく、目地底にはボンドブレーカーやバックアップ材を用いて2面接着にするとされています。
施工面での注意も示されています。プライマーの塗布が必要であること、著しく気温が低い・高い場合は所定の性能を確保しにくいこと、充填直後に降雨が予想される場合は作業を中止すること、降雨後などで被着面が湿潤状態のまま充填すると接着不良を起こす恐れがあること。さらに、異種シーリング材の打継ぎは本来望ましくないとも書かれています。
過去に目地を補修した履歴がある場合、材料の組み合わせや施工時の条件が、現在の水の入口に関わっているケースも想定されます。打ち替えと増し打ちの考え方は外壁シーリングの打ち替えと増し打ちが参考になります。
入口3:笠木・サッシ・水切り・設備配管との取り合い
協会資料は、ALCパネルと取り合う笠木、サッシ、水切り板、基礎部、設備配管部分などとの目地は、パネル間の目地とは異なった挙動が考えられるため、他部材の特性も考慮して、適切なプライマーとシーリング材を選択するよう求めています。
取り合い部は、パネル間の目地とは異なる挙動が考えられるため、個別の注意が必要とされる箇所です。同資料が寒冷地対策の項で示す納まりの例から、確認すべき点をいくつか挙げます。
- サッシまわり: サッシの水切り板の出寸法を、パネル外面より20mm以上持ち出し、両端に水返しのついたものとする例が示されています。サッシ取付けに先立ち、腰壁パネルの小口に防水プライマーを塗布する点も挙げられています
- 換気扇・換気口まわり: パネルとの取り合い部は全周を確実にシールする。フードの水切りの出は壁面から20mm以上とる
- ベランダまわり: 上端に笠木、下端に水切りを設ける。笠木の出寸法は20mm以上とし、防水の立上りは小口の外端部まで十分に巻き込む
- 基礎まわり: パネル面より布基礎を外側に出さない。布基礎とパネルとの取り合い部のシーリング処理を確実に行う
これらは寒冷地向けの記述として書かれていますが、雨水の浸入を防ぐ納まりの考え方として、取り合い部の点検の目安になります。
入口4:パラペット・笠木
パラペット(屋上の立ち上がり壁)まわりは、雨水と融雪水が当たる場所です。協会資料は、パラペット上端にALC専用笠木を使用し、出の寸法を20mm以上にすること、防水層をパネル外壁部まで巻き込むこと、防水立上がり部に成形コーナーキャント材を入れて増張りすることを示しています。
悪い例として、資料の図では、モルタル笠木、シーリング材の不備、のみ込み不足、笠木の出がなく水切り不良でひび割れが発生している状態が挙げられています。笠木まわりの劣化は、地上からは見えにくい箇所です。調査で屋上や笠木上面の確認が含まれているか、依頼の段階で確かめてください。
入口5:斜め外壁・隣棟間隔が狭い部分・屋根
水の入りやすい条件として、資料は次の点を特に注意するとしています。
- 斜め外壁: 垂直な壁面より降雨に対して厳しい条件になるため、屋根に準じた防水が必要です。下端との接合部には水切りを設けるなどの配慮が示されています
- 隣棟間隔が狭い部分: シーリング工事だけでは防水性能が十分に確保できないため、別途、隣接する建物との取り合い部に、雨とい・雨押さえなどを設ける必要があるとされています
- 屋根面: ALCパネルは吸水しやすいため、メンブレン防水または葺屋根工法による防水が必要です。メンブレン防水は露出防水が原則で、水勾配は梁や母屋などで1/50を目安にとるとされています
屋根の防水層については、施工時の乾燥不足が、ふくれ現象や防水層の接着不良の原因になると記されています。短辺目地部の増張りや、立上り下部の入隅部の処理、防水層端部の押え金物とシーリング材の併用も、漏水防止のポイントとして挙げられています。
雨水か、結露か。まず切り分ける
室内の濡れが、すべて外部からの雨水とは限りません。協会資料は、ALCパネルの凍害の水の浸入経路を、外部から浸入する水(降雨・融雪水)と、内部からの水(内部結露など)に分けて説明しています。後者は、室内側や、開口部まわりなどの冷橋となる部分から、パネル内部に水分が浸入して集中することで起こるとされています。
この資料の説明は凍害についてのものですが、水の入り方を「外部」と「内部」で分けて考える視点は、雨漏りの調査でも役に立ちます。見積もりの前に、次の点を業者に確認してください。
- 雨水の浸入か、結露かを、どのように切り分けるか
- 雨が降った時だけ現れるのか、降っていない時も湿っているのか(発注者から伝える情報)
この切り分けを飛ばして補修を始めると、原因が違うまま工事が進む恐れも出てきます。
調査を依頼するときに、業者へ伝えたい情報
業者が入口の候補を絞り込むには、建物と現象の情報が必要です。手元にあるものを、まとめて伝えてください。
| 伝えたい情報 | なぜ必要か |
|---|---|
| 濡れやしみが出た場所と、出た日 | 入口の方向と、降雨との関係を絞るため |
| 降雨の状況(強い雨の時か、風を伴う時か) | 外壁面からの浸入か、屋根・笠木からかの手がかりになる |
| 建物の構造・外壁の仕様(図面、竣工図) | ALCの取付け構法(縦壁ロッキング・横壁アンカーなど)や、仕上げの種類を確認するため |
| 過去の補修・塗装の履歴 | 目地の材料や、施工時期を把握するため |
| 建物の周辺条件(隣地との間隔、寒冷地、海岸など) | 隣棟間隔、凍害、塩害などの環境要因を確認するため |
| 室内の使い方(高温多湿、結露しやすい用途) | 内部結露の可能性を判断するため |
図面が手元にない場合でも、建物の竣工年や構造が分かれば役立ちます。外壁材がALCかどうか自体が不明な場合は、まず調査で確認してもらいます。
見積書で確認したい項目
調査と補修の見積もりでは、次の点を書面で確認してください。
| 確認項目 | 聞くこと |
|---|---|
| 調査の範囲 | 外壁面、目地、取り合い部(笠木・サッシ・配管)、屋根・パラペットのうち、どこまで確認するか |
| 調査の方法 | 目視、散水など、方法と、その選定の理由 |
| 報告書 | 入口の特定の根拠を、写真や図で示してもらえるか |
| 原因の切り分け | 雨水か結露かを、どう確認するか |
| 補修の範囲 | 入口の補修にとどまるのか、塗装や目地の全面改修まで含むのか。その理由 |
| 補修後の確認 | 補修後に、同じ条件で水が入らないことを、どう確認するか |
| 確認の手段 | どの高所作業の方法で、外壁面・屋上・笠木の上面まで確認するのか |
| 保証 | 補修箇所の範囲と期間。再発時の対応 |
調査の結果として、原因が塗膜の劣化なら塗装の仕様の議論になり、ひび割れや欠損が絡むならALC外壁の補修の議論になります。高所の確認方法は、高所作業4工法の比較が参考になります。ロープアクセスでの現地調査の流れはロープアクセスの現地調査で確認されることで解説しています。
入口が外壁面なのか、取り合い部なのか、屋根・パラペットなのかは、現地で見なければ判断できません。調査の段階から見積もりを依頼することも可能です。
費用について、確認できたこと・できなかったこと
調査費用や補修費用の相場は、ALC協会の資料に記載がありません。この記事でも、具体的な金額は載せていません。
金額が変わる要素は、見積書の項目から読み取れます。調査の範囲(外壁だけか、屋根・笠木まで含むか)、調査方法、足場や高所作業の方法、補修の範囲(局所か全面か)、そして保証の有無です。複数社に依頼する場合は、これらの条件を揃えたうえで比べてください。
よくある質問
Q. ALC外壁の雨漏りは、何が原因で起きますか。
A. ALC協会の資料から確認できる入口の候補は、仕上げ材(塗膜)の防水性能の低下、パネル間の目地のシーリング、笠木・サッシ・水切り・設備配管との取り合い部、パラペットまわり、斜め外壁・隣棟間隔が狭い部分・屋根の防水です。実際の原因は、現地の調査で特定しなければなりません。
Q. ひび割れを埋めれば、雨漏りは止まりますか。
A. ひび割れが入口とは限りません。資料は、仕上げ材の防水性能が低下するとパネル内に雨水が侵入するとしています。目地や取り合い部が入口の場合、ひび割れだけを補修しても止まらない場合も想定されます。入口の特定を先に依頼してください。
Q. 雨漏りと結露は、どう見分けますか。
A. 外観だけでは判断しにくい場合も出てきます。協会資料は、水の浸入経路を外部(降雨・融雪水)と内部(内部結露など)に分けて説明しています。業者に、切り分けの方法を確認してください。
Q. 屋根や笠木も調べてもらえますか。
A. 調査の範囲は業者によって異なります。パラペットや笠木、屋根の防水は、外壁の雨漏りの入口になりうるため、見積もりの段階で、調査範囲に含まれているかを確認してください。
Q. 補修の費用はいくらくらいですか。
A. ALC協会の資料に金額の記載はありません。調査の範囲、方法、高所作業の方法、補修の範囲で変わるため、条件を揃えた複数社の見積もりで比較してください。
まとめ
ALC外壁の雨漏りは、パネルの割れだけでなく、仕上げ材、目地のシーリング、取り合い部、パラペット・屋根の防水まで、複数の入口が考えられます。入口を特定してから補修の範囲を決めることが、同じ工事を繰り返さないための基本です。
原因の特定から相談したい場合は、oyazunaの無料見積もりフォームに、症状と建物の情報を入力してください。高所の調査に対応できる施工会社を探せます。