外壁シーリングは打ち替えと増し打ちどちらを選ぶ?ビル・マンションの見積書の見方

オヤズナ編集部代表
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高所ロープ専門の窓ガラス清掃、外壁塗装会社を専門に調査・比較する業界特化型プラットフォーム「オヤズナ」の運営者です。
高所ロープ会社での勤務経験を有し、現場視点と業界理解をもとに情報発信を行っています。また、労働安全衛生法に基づく高所作業関連講習を修了しており、安全管理および高所作業に関する基礎知識を有しています。
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管理会社から「外壁の目地シーリングが劣化しています。打ち替えが必要です」と報告を受け、見積書を開いたものの、打ち替えなのか増し打ちなのか、なぜその数量なのかが判断できない。そんな状況ではありませんか。

この記事では、ビル・マンションの発注者が、シーリングの工法選びと見積書の確認で押さえるべき点を整理します。足場を組むのか、ロープアクセスで部分的に施工するのかという判断の入口も扱います。

この記事の結論

発注者がやるべきことは、業者に「なぜその工法か」と「何メートル施工するか」を書面で出してもらい、同じ条件で並べて比べることです。建物が古ければ、打ち替えの前にPCBとアスベストの材種確認が要ります。

打ち替えと増し打ちは、既存シーリングをどうするかが違う

外壁のシーリングは、パネルやタイル、サッシと外壁の間にできる目地に充填する、防水と気密のための材料です。日本シーリング材工業会は、建築用シーリング材を、ガラスやサッシ、パネルなどの各種部材間の目地に防水性と気密性を確保する目的で使う材料と説明しています。

劣化したシーリングの直し方は、現場では一般に「打ち替え」「増し打ち」と呼び分けられます。打ち替えは既存を撤去して新しく充填する方法、増し打ちは既存を残して重ねる方法を指す呼び方です。

ただし、国土交通省の「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」は、この2つの語を工法名として使っていません。同仕様書の第3章7節「シーリング」が、既存シーリングを改修する工法として示しているのは次の3つです。

仕様書上の工法名(節番号)原文で確認できる工程
シーリング再充填工法(3.7.5)既存シーリング材を、目地被着体に沿ってカッター等で切込みを入れ、可能な限り除去する。バフ掛け、サンダー掛け、清掃用溶剤で清掃する。油分が残る場合は事前に接着性の試験を行う。軽微な欠損部はポリマーセメントモルタル等で補修する
拡幅シーリング再充填工法(3.7.6)目地をダイヤモンドカッター等で所定の目地形状に拡幅する。油分が残る場合は事前に接着性の試験を行う
ブリッジ工法(3.7.7)シーリング材の被着面で事前に接着性の試験を行う。ボンドブレーカーを既存シーリング材が完全に隠れるよう張り付け、エッジング材を張って充填し、硬化後にエッジング材を取り除く

どの工法も、充填そのものは同仕様書3.7.4「シーリング充填工法」に従います。3.7.4には、降雨や結露のおそれがある場合の作業中止、被着体が5℃以下または50℃以上になるおそれがある場合の作業中止、プライマー塗布、バックアップ材やボンドブレーカーの使い方などが定められています。

一般に言う「打ち替え」は、既存を除去する再充填工法に近い内容です。既存を残して上から被せる「増し打ち」は、既存を隠してから充填するブリッジ工法に近い工程を含みます。ただし、仕様書上の名称と現場の呼び分けが一致するわけではありません。見積書に書かれた「打ち替え」「増し打ち」が、どこまで撤去し、どう下地を処理する内容なのかは、業者ごとに確認が必要です。

この仕様書の位置づけ

公共建築改修工事標準仕様書は、官庁営繕の工事向けに国土交通省が定めたものです。民間のビルやマンションの工事に、そのまま適用されるものではありません。ここでは、工程の考え方を知るための参照例として紹介しています。

仕様書は、工法ごとの耐久年数や費用の優劣を示してはいません。どの工法が自分の建物に適するかは、既存シーリングの状態と目地の位置を確認した業者の書面説明で判断してください。

見積書でまず見るのは「工法」と「数量(m)」の2行

シーリングの見積書は、一般に施工するメートル数と、1mあたりの単価で組み立てられます。工法が違えば、撤去や処分の項目が加わるかどうかも変わります。

複数社の見積書を並べるとき、合計金額より先に見てほしいのが次の2点です。

  1. 工法の欄に「打ち替え」「増し打ち」のどちらが書かれているか、部位ごとに書き分けられているか
  2. 数量(メートル数)が、建物のどの部分を何メートルとして積算したものか

工法が部位ごとに書き分けられていない見積書は、比較が成り立ちません。合計金額の差が、工法の違いから生じている場合があるため、まず工法欄を見てください。

数量も同様です。一方が「外壁目地とサッシ廻りの両方」、もう一方が「外壁目地のみ」で積算していれば、安く見える方は施工範囲が狭いだけかもしれません。数量の根拠になる図面や、現地での測定方法を聞けば、範囲の違いは見えてきます。

相見積もりで揃えたい条件

工法(打ち替え/増し打ち)・施工部位(外壁目地、サッシ廻り、笠木など)・数量(m)・シーリング材の種類を、同じ条件に揃えて見積もりを依頼してください。条件が揃っていなければ、金額の差は工事内容の差を映しているだけです。

仕様書の工程から、発注者が見積書や業者の説明で確認できる点を挙げます。

  • 既存シーリングの除去範囲と方法。切込みを入れて可能な限り除去するのか、既存を残すのか
  • 清掃の方法。バフ掛けやサンダー掛け、清掃用溶剤など、何で下地を処理するのか
  • 既存シーリングの油分が残る場合の接着性試験を行うか。ブリッジ工法のように被着面を試験するか
  • 外部に面するシーリング材の、施工前の接着性試験を行うか。仕様書では、特記がなければ簡易接着性試験が標準です
  • 施工後の確認方法。仕様書は、正しく充填されているかを目視で、硬化と接着の状態を目視と指触で確認すると定めています

公共工事ではこれらを仕様書で定めています。民間工事では、業者ごとに実施内容が異なるため、見積書や施工計画書に書かれているかを確認してください。

見積書には、シーリングそのもの以外の項目も並びます。次の項目が計上されているか、計上されていない理由は何かを確認してください。

  • 既存シーリングの撤去
  • プライマー塗布や、目地の清掃・下地処理
  • 充填するシーリング材の種類と、塗装を重ねる場合の取り合い
  • 廃材の処分費
  • 足場、ゴンドラ、ロープアクセス等の仮設・アクセス費用

現地調査で何を確認されるかはロープアクセスの現地調査で何を確認されるかで整理しています。事前に知っておくと、見積もりの精度が上がります。

打ち替えの周期は12〜15年が目安。単価は条件を聞かなければ決まらない

何年ごとに直すのか、1mあたりいくらなのか。発注の前に知りたい点だと思います。周期については、国土交通省の公開資料に目安が載っています。

国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン・標準様式」(令和6年6月改定)は、様式第3-2号「推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容」で、外壁目地・建具周り・スリーブ周り・部材接合部等のシーリングの工事区分を「打替」、修繕周期を「12~15年」としています。想定する修繕方法は、コンクリートの打継ぎ目地、サッシ回り、タイル伸縮目地のコーキング打替えです。同じ様式では、外壁塗装の塗替え(12~15年)やタイル張補修(12~15年)も同じ周期で並び、工事の実施時期は経済性を考慮して集約する考え方が示されています。

ただし、この周期は分譲マンションの長期修繕計画を立てるための標準様式にある目安です。同ガイドラインは、修繕周期をマンションの仕様、立地条件、調査・診断の結果等に基づいて設定するとしています。ビルやテナント建物、材料の種類や部位、日当たりによっても傷み方は変わります。12〜15年は計画づくりの出発点にとどめ、実際の時期は現地の劣化診断と業者の書面説明で決めてください。

単価はどうでしょうか。同ガイドラインでは、修繕工事費を数量に単価を乗じて算定するとし、単価は工事請負契約の内訳書や専門工事業者の見積価格等を参考に設定すると書かれています。全国共通のシーリング単価表は、同ガイドライン、国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書、日本シーリング材工業会の各ページの範囲では見当たりませんでした。そのため、この記事では具体的な単価を載せません。業者のブログに並ぶ金額は、材料・目地の幅・施工高さ・アクセス方法が書かれていなければ、見積書とズレます。見積もりは、これらの条件を揃えて比べてください。

同会は製品を、シリコーン系、変成シリコーン系、ポリサルファイド系、ポリウレタン系、アクリル系などに区分して掲載しています。どの材料が使われているかも、見積もりの前提になります。

点検の機会をつくるうえでは、建築基準法12条の定期報告や、大規模修繕の計画が手がかりになります。12条は、対象となる特定建築物(政令で定めるもの、および特定行政庁が指定するもの)の所有者に、定期に一級建築士・二級建築士または建築物調査員の調査を受け、結果を特定行政庁へ報告するよう求めています。自分の建物が対象かどうかは、管理会社や特定行政庁で確認してください。

目地の割れや剥がれなど、目に見える変化があれば、その部位を業者に示して診断を求めましょう。劣化症状の見分け方は外壁のひび割れ放置のリスクと見分け方が参考になります。

築年数が古い建物は、打ち替える前に材質の確認が要る

ここが、戸建ての記事にはなかなか載らない、ビル・マンションの発注者が当たる論点です。古い建物のシーリングは、撤去や処分に注意が必要な材料が使われている可能性を疑ってください。

1972年以前の建物は、PCB含有のポリサルファイド系

日本シーリング材工業会は、PCBは1972年以前に製造されたポリサルファイド系シーリング材にだけ含まれていると説明しています。1973年以降に製造されたポリサルファイド系には、PCBは一切使われていません。1973年以降に施工された建物なら、PCB含有の心配はありません。

1972年以前に施工された建物でポリサルファイド系が使われている場合、PCBを含んでいる可能性が高くなります。ただし100%ではなく、確認には分析が必要です。同会の資料では、サンプル採取が1物件1日あたり3万〜5万円、材種判定が8サンプル以内で3,850円(税込)、PCB含有分析が1サンプルあたり5万円前後の概算です。いずれも条件によって変わります。

PCB含有と判明した場合、打ち替えで出た廃シーリング材はPCB廃棄物として扱います。同会の資料によれば、PCB廃棄物特別措置法に基づき、事業者(建物オーナー等)に適正な保管と届出が求められます。同会の資料には、低濃度PCB廃棄物(10.0重量%以下)の処分委託期限は令和9年(2027年)3月31日と記載されています。

昭和47年(1972年)以前の建物オーナーへ

打ち替えの見積もりを取る前に、既存シーリングの材種を確認してください。PCB含有と判明した場合は、撤去・保管・処分の費用と手続きが別に発生します。見積書に「PCB含有の確認」や「廃材処分」の項目がない場合は、業者に質問してください。

2002年以前は、油性コーキング材とブチルゴム系のアスベスト

同会は、過去にアスベストを含有していたシーリング材は「油性コーキング材」と「ブチルゴム系シーリング材」だけで、他の種類には販売当初からアスベストは含まれていないとしています。含有していた時期は、油性コーキング材が平成14年(2002年)まで、ブチルゴム系が平成10年(1998年)までの製品に及びます。

同会の見解では、2003年以降に施工された建物なら、アスベストは含まれていないか、0.1重量%未満で石綿障害予防規則には該当しません。2002年以前の建物でも、油性コーキング材とブチルゴム系が使われていなければ、アスベストは含まれていません。改修で打ち替え済みの目地は、打ち替えた時期が2002年以前なら、材種を確認します。

アスベストを0.1%超含むシーリング材は、石綿障害予防規則に従った取り扱いが必要です。同会は、シーリング材中のアスベストは有機系樹脂で固定されているため、廃棄物処理法上は従来通り「廃プラスチック類」に分類されるとしています。

この同会の見解は2014年9月時点のものです。現行の石綿障害予防規則と、解体・改修工事の事前調査などの義務は、別途確認してください。業者や管理会社に、現在の法令に沿った手順で進めるかを尋ねることが確実です。

建築年が古く、材種が分からない場合は、設計図書・施工記録の確認から始め、記録がなければ材種判定を依頼します。工事の途中で材種が問題になると、追加費用と工期延長につながります。

足場を組むか、ロープアクセスで部分施工するか

足場を組むと費用が大きくなります。目地だけなら、ロープアクセスで直せないかと考えるのは自然です。

ロープアクセスでの施工可否は、施工会社によって対応が異なります。同じ建物でも、対応できる会社と、そうでない会社に分かれます。現地調査で、その部位に対応できるかを確認してください。

可否を相談するときに、発注者側で整理しておくと判断が早くなる観点は次の通りです。

  • 劣化が出ている部位は、ピンポイントか、外壁全面か。全面なら、足場やゴンドラと比べて総額で判断する
  • 塗装など他の外壁工事と同時に行うか。同時なら、足場を一度組んで全て済ませる方が合理的な場合もある
  • 屋上の設置物、吊り下げの支点、隣地との距離など、ロープを下ろせる条件があるか
  • 天候や施工後の日程をどう見込むか

これらの技術的な可否は、現場を見た業者でなければ判断できません。「ロープアクセスが安い」という一言ではなく、現地調査のうえで、この部位は部分施工に適するかどうかを理由つきで書面にしてもらってください。

足場を組まずに済む範囲と判断基準は足場なしの外壁補修の費用相場と判断基準で整理しています。塗装を伴う場合の周期の考え方は外壁塗装の耐用年数と判断のしかたが参考になります。

塗装と同時に行うときの注意

シーリングは外壁塗装と同時に行うことが多い工事です。この場合、シーリング材と塗料の組み合わせが問題になります。

日本シーリング材工業会は、技術情報として「弱溶剤系1液形塗料の塗装面への弾性シーリング材使用に関する注意」を公開しています。塗料とシーリング材の組み合わせは、見積書に書かれた材料の種類と合わせて、業者とメーカー情報で確認してください。

発注者として確認するのは、見積書に「シーリング材の種類」と「塗装との取り合い」が書かれているかどうかです。種類が明記されていなければ、後から材料の変更や仕様の食い違いが起きます。

施工後の保証と、施工品質の確認

日本シーリング材工業会は、「品確法」に対するシーリング材の保証条件と補償範囲についての資料を公開しています。保証の範囲は、資料や契約書の記載で個別に異なります。見積もりの段階で、次の3点を書面で確認してください。

  1. 施工後の保証の有無と期間、保証書の発行
  2. 保証の対象(材料のみか、施工不良も含むか。誰が保証するのか)
  3. 施工中の写真記録の提出(撤去後の目地、プライマー塗布後、充填後)

打ち替えは、撤去後の目地とプライマー塗布の写真が残らなければ、後から確認する方法がありません。写真提出を条件にすれば、施工の質を確認しやすくなります。

無料で相談できます

工法と数量の見積もりを比べたい、足場の要否を知りたい、という場合は、無料で見積もりを依頼するから条件を送ってください。現地調査から施工までの流れは見積もりから施工までの流れにまとめています。

よくある質問

Q. 打ち替えと増し打ち、結局どちらを選べばいいですか。
A. 既存シーリングの状態と目地の位置で決まります。判断は現地で既存の状態を見た業者が行うものです。発注者は、その工法を選んだ理由を書面で出してもらってください。

Q. 増し打ちの方が安いなら、増し打ちで十分ですか。
A. 金額だけでは判断できません。既存シーリングの状態の確認結果と、工法を選んだ理由を業者に説明してもらい、数量・施工範囲を揃えた見積もりで比べてください。

Q. 外壁のシーリングは何年ごとに打ち替えるものですか。
A. 国土交通省の長期修繕計画標準様式(令和6年6月改定)は、シーリングの打替えの修繕周期を12〜15年としています。ただし計画用の目安で、材料・部位・日当たり・立地条件で変わります。実際の時期は、現地の劣化診断と業者の書面説明、12条定期報告や大規模修繕の機会を基準にしてください。

Q. 築50年のビルで打ち替えを検討しています。事前に何を確認しますか。
A. 既存シーリングの材種です。1972年以前の施工ならPCB含有のポリサルファイド系、2002年以前なら油性コーキング材やブチルゴム系のアスベストの可能性を、設計図書・施工記録で確認し、不明なら材種判定を依頼します。

Q. 目地だけの補修でも、足場は必要ですか。
A. 劣化の範囲と建物の条件で変わります。ロープアクセスで対応できるかは施工会社ごとに異なるため、現地調査で確認してください。外壁全面で他の工事と同時に行うなら、足場を組む方が合理的な場合も出てきます。

まとめ

シーリングの見積もりで確認するのは、工法、施工部位、数量、材料の種類、廃材処分の5点です。建物が古ければ、PCBとアスベストの材種確認が打ち替えの前提になります。足場を組むかどうかは、劣化の範囲と他工事との同時施工で変わり、現場を見た業者の書面説明で判断します。

条件を揃えた相見積もりが、金額の差を工事内容の差として読み解く近道です。工法と数量の見積もりを比べたい場合は、無料で見積もりを依頼するからご相談ください。

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