IRATA・JIRAAとは?ロープアクセス業者の資格・認定を発注者向けにわかりやすく解説

オヤズナ編集部代表
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高所ロープ専門の窓ガラス清掃、外壁塗装会社を専門に調査・比較する業界特化型プラットフォーム「オヤズナ」の運営者です。
高所ロープ会社での勤務経験を有し、現場視点と業界理解をもとに情報発信を行っています。また、労働安全衛生法に基づく高所作業関連講習を修了しており、安全管理および高所作業に関する基礎知識を有しています。
オヤズナでは、各社の公式サイト・公開情報・施工実績情報をもとに、「安全性(保険加入・資格情報)」「実績(創業年数・施工事例)」「対応力(エリア・階数・緊急対応)」などの独自基準でデータを整理・比較。これらのオリジナルデータベースをもとに、公平性と透明性を重視した記事制作および情報監修を行っています。

業者の会社案内や見積書に「IRATA認定」「JIRAA検定」と書かれているのを見て、「これは一体何なのだろう」と思ったことはありませんか?

ロープアクセス業界には、法律で定められた資格とは別に、民間の国際団体・国内団体が運営する認定制度がいくつも存在します。ところが、これらを整理して解説している情報は、日本語ではほとんど見当たりません。

この記事では、代表的な資格・団体である「IRATA」「JIRAA」を中心に、法定資格との違い、それぞれの制度の中身、そして業界内で名称が紛らわしくなっている団体について、一次情報を確認しながら整理します。

まず、法律で決まっている資格と区別する

ロープアクセスに関わる資格・制度を理解するうえで最初につまずきやすいのが、「法律で義務づけられた資格」と「民間・国際団体の認定資格」がごちゃ混ぜに語られていることです。

日本の労働安全衛生法に基づき、高さ2m以上で作業床の設置が困難な箇所でロープを使って行う「ロープ高所作業」に従事する労働者には、事業者が「ロープ高所作業特別教育」を受講させることが義務づけられています(2016年7月1日義務化、学科4時間・実技3時間の計7時間以上)。

これとは別に、墜落制止用器具(フルハーネス)を使う作業には「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」という、また別の法定教育が必要です。

これから解説するIRATA・JIRAAは、この法定特別教育とは別物の、民間・国際団体が独自に運営する認定制度です。「IRATA資格を持っているから法定の特別教育は不要」というわけではなく、両方を満たしている業者もいれば、どちらか一方だけというケースもあります。

見積もりを比較する際は、この2つの違いを踏まえたうえで確認することをおすすめします。

なお、高所作業に関連する資格はほかにもあります。作業床10m以上の高所作業車を運転するには「高所作業車運転技能講習」、つり上げ荷重1t以上の玉掛け作業には「玉掛け技能講習」がそれぞれ必要です。

ロープアクセス以外の工法を使う場面でも資格の確認が必要になるケースがあるため、依頼する工法に応じてどの資格が関係するのか、あわせて押さえておくとよいでしょう。

IRATA(国際産業用ロープアクセス協会)とは

IRATAとは
正式名称:Industrial Rope Access Trade Association(現IRATA International)
発祥:英国、法人設立日は1997年8月29日(英国Companies House確認)
制度:レベル1〜3の3段階認定、3年ごとに更新
規模:世界約700社の会員企業、13万人以上の技術者を養成

IRATAは、石油・ガス業界の洋上プラットフォームでのメンテナンス作業の安全性を確保する目的で、英国の業界大手企業が主導して発足した国際団体です。

世界約700社の会員企業を抱え、13万人以上の技術者を養成してきたとされ、ビッグベンやエッフェル塔、ブルジュ・ハリファといった世界的に有名な建造物でもIRATA認定技術者が作業を行った実績があります。

認定制度はレベル1〜3の3段階で構成され、上位レベルに進むには一定期間・時間数の実務経験(目安として1年以上かつ1,000時間以上)が必要とされ、資格は3年ごとに更新する仕組みです。

日本国内でも、風力発電の風車ブレード点検分野を中心にIRATA資格取得者が増えているとされ、2023年時点で認定技術者数は500人を超えるという情報があります(出典は業界メディア・トレーニング会社サイトのため、公的統計ではない点に留意が必要です)。

背景には、洋上・陸上を問わず風力発電設備が増加する中で、風車のブレード(羽根)を定期的に点検・補修する需要が高まっていることがあるとみられます。

IRATAの認定制度では、ロープアクセスの基本原則として「メインロープ」と「バックアップロープ(セーフティライン)」の2本のロープを常に併用することが求められています。

これは、片方のロープが万が一破断や損傷を起こしても、もう片方が安全を確保する「二重の安全策」という考え方に基づくもので、日本の法定制度である「ロープ高所作業特別教育」がメインロープとライフラインの2本使用を義務づけているのも、同様の安全思想に基づいています。

IRATAの設立年、実は正確な年号を特定するのが難しい

IRATAの設立年について、日本語の記事では「1988年」「1992年」など、情報源によって異なります。

英国政府の公式記録(Companies House、法人番号03426704)では、法人としての登記日は1997年8月29日でした(旧名称は「INDUSTRIAL ROPE ACCESS TRADE ASSOCIATION」で、2014年に現在の「IRATA INTERNATIONAL」へ改称しています。)

一方、IRATA公式サイトの沿革ページには具体的な西暦の記載がなく、「過去30年間」という表現にとどまっています。少なくとも「法人としての正式な設立日は1997年8月」という一次情報は、この記事で初めて明確になったといえます。

JIRAA(日本産業用ロープアクセス協会)とは

JIRAAとは
正式名称:一般社団法人日本産業用ロープアクセス協会
拠点:兵庫県加古川市
制度:ISO22846準拠「産業用ロープアクセス検定」、実践型の「ロープアクセス・レスキュー資格検定」の2種
特徴:インストラクターは全員IRATA国際資格レベル3以上を保有

JIRAAは、兵庫県加古川市に拠点を置く一般社団法人です。特に公的なレスキュー業務に従事する人にとって、世界標準のロープアクセス技術やレスキュー技術を習得する機会が少なかったという課題意識から、ISO22846(国際標準のロープアクセスシステム)に準拠した教育プログラムを日本国内向けに体系化したのが始まりとされています。

JIRAAが提供する資格制度は大きく2つあります。

ひとつは実践型のレスキュー教育・検定プログラムである「ロープアクセス・レスキュー資格検定」、もうひとつはISO-22846に準拠した「産業用ロープアクセス検定」です。各地の認定会場で指導にあたるインストラクターは、全員がIRATA国際資格レベル3以上を保有していることも特徴です。

また、労働安全衛生規則に基づく「ロープ高所作業特別教育」「墜落制止用器具特別教育」といった法定教育も、JIRAAを通じて受講できます。

2026年8月には、厚生労働省と労働安全衛生総合研究所がJIRAA・IRATAのロープアクセスの現場を視察したことが公式サイトで報告されており、行政側もロープアクセスという工法への関心を高めていることがうかがえます。

JIRAAが「公的レスキュー業務」を出発点として設立された経緯を踏まえると、消防・救助分野との親和性が高い教育体系だといえるでしょう。

JIRAAの資格制度は、IRATA・SPRATのレベル体系を参考にしつつ、国内の実情に合わせて再構成されている点が特徴です。産業用ロープアクセス検定はISO-22846という国際標準規格に準拠しているため、資格そのものは国内限定のローカル資格ではなく、国際的な技術水準を踏まえた制度だと位置づけられます。

SPRAT(米国発の資格団体)にも触れておく

IRATAと並んで名前が挙がる国際資格に、米国発の「SPRAT(Society of Professional Rope Access Technicians)」があります。SPRAT公式サイトによれば、教育・基準策定・認定運営を通じてロープアクセスの安全な活用を進める会員主導の組織で、米国の非営利団体(501c6)として運営されています。拠点は米国ペンシルベニア州で、会員には商業分野の企業から専門サービス業、政府機関まで幅広い層が含まれるとされています。

SPRATの認定制度もIRATAと同様にレベル1〜3の3段階で構成されており、業界のブログ記事では「1995年に米国で設立された」という情報も見られますが、この記事の調査時点でSPRAT公式サイトから設立年を直接確認することはできませんでした。日本国内でのSPRAT認定者数や普及状況についても、公的な統計は見当たらず、IRATA・JIRAAと比べると日本国内での存在感はまだ薄いとみられます。トレーニング機関によっては、IRATA・SPRATの両方の認定コースを用意している場合もあるため、業者の会社案内でこの略称を見かけた場合は、IRATAとは別の米国発の資格制度だと理解しておくとよいでしょう。

名称が紛らわしい「日本ロープアクセス技術協会」問題

「一般社団法人ロープアクセス技術協会」(略称SORAT)は、1997年4月1日に設立され、京都府長岡京市に本部を置き、独自の「3次元ロープアクセス技術」の管理・普及を目的としています。運営母体は、ロープアクセスによる調査・点検業務を1991年から手がける株式会社きぃすとんで、奈良県五條市に大型の訓練施設を持っています。

興味深いことに、SORATの法人設立日(1997年4月1日)は、この記事の前半で確認したIRATAの法人設立日(1997年8月29日)と、わずか数か月しか違いません。

海外と日本という別々の場所で、ほぼ同じ時期にロープアクセス技術を体系化しようという動きが生まれていたことになります。この偶然が意味するところまでは分かりませんが、1990年代後半が、この業界にとって一つの転換点だったことをうかがわせます。

発注者としてはどう受け止めればよいか

ここまで見てきたとおり、ロープアクセスの世界には、法定資格・国際資格(IRATA)・国内団体(JIRAA、SORATなど)が並存しており、それぞれ独立した制度です。

発注者であるあなたが業者を選ぶ際に大切なのは、「どの資格を持っているか」を単純に比較することよりも、次のような視点で確認することです。

  • 法定の特別教育(ロープ高所作業特別教育・フルハーネス特別教育)を受講した作業員が現場に入るか
  • IRATA・JIRAA・SORATなど、何らかの第三者機関による技術認定を受けているか、その内容はどのようなものか
  • 資格保有者が実際に現場での実務経験を積んでいるか(資格取得直後か、実務年数が長いか)

資格の有無だけで安全性を保証できるわけではありませんが、少なくとも「どのような教育・訓練体制を持つ会社なのか」を把握するための、有効な判断材料のひとつにはなるはずです。

見積もりや会社案内に資格名が並んでいても、それが「法定資格」「国際資格」「国内団体の検定」のどれに当たるのかまでは、書かれていないことも珍しくありません。気になる場合は、遠慮せずに「この資格はどの団体が発行しているものですか」と尋ねてみてください。きちんとした業者であれば、資格の位置づけを説明できるはずです。

窓ガラス清掃・外壁調査・外壁塗装など、どの用途でロープアクセスを依頼する場合でも、資格・保険加入・実務経験の3点セットを確認する姿勢は共通しています。

建築基準法12条点検のように法定周期のある調査を控えている場合は、報告書を作成できる有資格者(一級・二級建築士または特定建築物調査員)が在籍しているかどうかも、あわせて確認しておきたいポイントです(建築基準法12条点検とは?外壁調査の対象・周期・罰則をわかりやすく解説も参考になります)。

よくある質問

Q. IRATAとJIRAA、どちらの資格を持っている業者を選べばよいですか。

A. どちらが優れているというものではありません。IRATAは国際的に広く使われている資格で、海外の現場や大規模プロジェクトでの実績を重視する場合に参考になります。JIRAAは日本国内の実情に合わせて体系化された教育制度で、国内でのレスキュー対応力なども含めて評価したい場合に参考になります。あなたの建物の規模や求める安全体制に応じて、業者に直接確認してみることをおすすめします。

Q. 資格を持っていない業者に依頼するのは危険ですか。

A. 資格の有無だけで一概に判断することはできません。法定の特別教育は事業者の義務ですが、IRATA・JIRAA・SORATといった民間資格は任意の取得です。資格がなくても十分な実務経験と安全管理体制を持つ業者もあれば、資格だけを掲げて実態が伴わないケースも考えられます。資格の有無に加えて、保険加入状況や過去の施工実績も合わせて確認することをおすすめします。

Q. 「日本ロープアクセス技術協会」と「ロープアクセス技術協会」は同じ団体ですか。

A. この記事の調査時点では別の団体である可能性が高いと考えられます。「日本ロープアクセス技術協会」という名称そのものの公式サイトは確認できませんでしたが、「ロープアクセス技術協会(SORAT)」という、日本を冠さない類似名称の団体は実在が確認できています。名称が非常に似ているため、業者の紹介文などを見る際は注意してください。

Q. IRATA資格を取得するにはどのくらいの費用がかかりますか。

A. トレーニング会社によって異なりますが、レベル1のトレーニングコースで15万円〜25万円程度という情報があります(業者ブログの情報であり、一次情報としての確認はできていません)。正確な費用は、各トレーニング機関に直接問い合わせることをおすすめします。

Q. SPRATとIRATA、両方の資格を持っている業者もいますか。

A. います。海外案件も含めて幅広く対応する業者の中には、IRATAとSPRATの両方の認定を取得しているトレーニング機関・技術者もいます。どちらの資格を重視するかは、依頼する案件の性質(国内中心か、海外の基準に合わせる必要があるか)によって変わってくるため、迷う場合は業者に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

ロープアクセスの資格・団体制度は、法定資格と民間の国際・国内資格が入り混じっていて分かりにくい分野です。IRATAは国際的に広く使われている資格で、法人としての設立は1997年8月と確認できました。JIRAAは日本国内でISO22846準拠の教育を体系化した団体です。

また、「日本ロープアクセス技術協会」という名称は確認できなかった一方、名称の似た「ロープアクセス技術協会(SORAT)」という別団体が実在することも分かりました。

業者を選ぶ際は、資格の名前だけで判断せず、法定教育の受講状況や実務経験も含めて、総合的に確認してみてください。

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