マンション大規模修繕、業者選定はどう進める?談合・バックマージンを避ける相見積もりのチェックポイント

マンション大規模修繕、業者選定はどう進める?談合・バックマージンを避ける相見積もりのチェックポイント
オヤズナ編集部代表
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オヤズナ編集部代表

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高所ロープ専門の窓ガラス清掃、外壁塗装会社を専門に調査・比較する業界特化型プラットフォーム「オヤズナ」の運営者です。
高所ロープ会社での勤務経験を有し、現場視点と業界理解をもとに情報発信を行っています。また、労働安全衛生法に基づく高所作業関連講習を修了しており、安全管理および高所作業に関する基礎知識を有しています。
オヤズナでは、各社の公式サイト・公開情報・施工実績情報をもとに、「安全性(保険加入・資格情報)」「実績(創業年数・施工事例)」「対応力(エリア・階数・緊急対応)」などの独自基準でデータを整理・比較。これらのオリジナルデータベースをもとに、公平性と透明性を重視した記事制作および情報監修を行っています。

「大規模修繕の業者選定、何から手をつければいいのか分からない」

マンションの大規模修繕工事は、多くの人にとって一生に数回しか経験しない大きなイベントです。

工事費用は戸あたり100万円を超えることも珍しくなく、修繕積立金という区分所有者全員の財産を扱う以上、「良い業者を選べているのか」「相見積もりを取ったつもりが、実は出来レースだったらどうしよう」という不安を抱くのは当然のことです。

実際、マンションの大規模修繕をめぐっては、国土交通省が2017年に異例の注意喚起を行うほど、業者選定にまつわるトラブルが社会問題化した経緯があります。

この記事では、国土交通省の公式資料をもとに、業者選定の進め方、発注方式の違い、そして相見積もりを取る際に押さえておきたいチェックポイントを整理します。

そもそも大規模修繕はいつ、何をする工事なのか

業者選定の話に入る前に、大規模修繕がどのタイミングでどんな工事を指すのか、簡単に確認しておきましょう。国土交通省の資料によれば、分譲マンションの大規模修繕は、次のようなサイクルで実施されるのが一般的です。

  • 第1回(築後10〜15年、一般的には12年):外壁塗装・タイル補修・屋上防水・廊下やバルコニーの防水工事・鉄部塗装・昇降機設備の補修
  • 第2回(築後24〜30年、一般的には24年):第1回と同様の工事に加え、給水・排水設備の補修、昇降機設備の取替
  • 第3回(築後36〜45年、一般的には36年):上記に加え、外構補修、建具(バルコニー手すり・窓サッシ・玄関扉等)の取替

なお、長期修繕計画の計画期間は、令和6年6月の改定で「25年以上」から「30年以上(2回の大規模修繕を含む)」へと見直されました。

あなたのマンションが今、何回目の大規模修繕を控えているのかによって、工事のボリューム・必要な専門性も変わってくる、という前提を押さえたうえで、業者選定の話に進みます。

なぜ業者選定でトラブルが起きやすいのか

大規模修繕工事の業者選定は、次の3つの理由からトラブルが起きやすい構造になっています。

  • 専門知識の非対称性:発注する側の管理組合には、建築や工事の専門知識を持つ人がいないことがほとんどです。
  • 関係者間の利益相反:設計・監理を担うコンサルタントと、実際に工事を行う施工会社の間に、管理組合には見えない利害関係が生じることがあります。
  • 意思決定の複雑さ:理事会・修繕委員会・総会という複数の合意形成プロセスを経るため、検討開始から工事完了まで2年以上かかることも珍しくありません。

この3つが重なることで、「専門知識がない管理組合に、専門知識を持つ側が付け込む」という構図が生まれやすくなります。

実際に国土交通省は平成29年(2017年)1月27日付で「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」という通知を発出し、設計コンサルタントが管理組合の利益と相反する立場に立つケースがあることを公式に指摘しています。

問題になっている「バックマージン」の仕組み

具体的にどのようなことが起きているのか、国が公式に指摘している構図を見ていきましょう。

国の公式な指摘
平成29年(2017年)1月27日、国土交通省は「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」を通知。
設計監理方式において、発注者である管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在を公式に指摘し、相談窓口の活用を呼びかけました。
出典:国土交通省公式資料

典型的な手口は、次のような流れです。

まず設計コンサルタントが、相場よりも極端に安いコンサルティング費用を提示して管理組合と契約します。

「安くてお得だ」と感じて契約してしまいますが、実はこのコンサルタントは、裏で特定の施工会社からバックマージン(工事代金の一部を紹介料として受け取ること)を得る前提で動いています。

相見積もりを取る段階になると、コンサルタントが「おすすめの業者」として特定の施工会社を紹介しますが、他の候補業者にも高めの見積もりを出すよう裏で調整していることがあり、表面上は競争入札に見えても、実際には受注先が最初から決まっている「出来レース」になっているケースが指摘されています。

国土交通省が実際にマンション大規模修繕工事944事例を調査した実態調査(平成30年5月11日公表)では、次のような具体的な事例も報告されています。

  • 最も安価な見積金額を提示したコンサルタントに業務を依頼したところ、実際に調査診断・設計を行っていたのはコンサルタントの職員ではなく施工会社の社員だったことが発覚した。
  • 設計会社が、施工会社候補5社のうち特定の1社にだけ少ない数量の工事内容を伝え、その1社の見積金額が安く見えるよう仕向けていた。

このような事態を避けるため、あなたが確認しておきたいのは次のようなサインです。

  • 管理会社が特定のコンサルタントだけを推薦してくる
  • コンサルタントが推薦する施工会社が、毎回同じ顔ぶれになっている
  • 相見積もりの価格差が不自然に大きい(2〜3割以上)
  • コンサルタント費用が無料や極端に安い
  • 施工会社の選定プロセスが不透明で、誰がどう決めたのか説明できない

なお、これは「設計監理方式そのものが悪い」という話ではありません。設計監理方式は本来、専門知識のない管理組合をサポートし、施工会社を客観的にチェックするための仕組みです。問題は、一部の悪質なコンサルタントと施工会社がこの仕組みを悪用していることにあります。

こうした問題が起きる背景には、次のような構造があると指摘されています。

  • 発注する管理組合側に専門知識がないという、情報の非対称性
  • 管理会社・コンサルタント・施工会社の関係が外部から見えにくいという、利益相反の存在
  • 価格形成や選定プロセスが不透明であること
  • 長年「業界の慣習」として続いてきたという体質的な要因
  • 区分所有者自身が、自分の財産である修繕積立金の使途に関心を持ちにくいこと

最後の「関心を持ちにくいこと」は、実はあなた自身にも関わる部分です。

理事会や修繕委員会の中に専門家がいなくても、「何かおかしい」と感じたときに声を上げる区分所有者が一人でもいることが、実は最も有効な抑止力になります。

国としてもこの構造を変えるため、令和7年(2025年)10月にマンション標準管理規約が改正され、管理組合の運営の透明性を高めるルール整備が進められています。

設計コンサルタントの「業務量」から適正さを見抜く

設計監理方式を採用する場合、見積金額の高い・安いだけでなく、コンサルタントが提示する「業務量」にも目を向けてみてください。

国土交通省の実態調査では、設計コンサルタント業務の内容を人・時間ベースで集計しており、その内訳は工事監理40.3%、設計31.8%、調査・診断15.2%、施工会社選定への協力8.1%、長期修繕計画の見直し3.6%となっています。

このうち最も大きな割合を占める「工事監理」は、実際に工事が始まってから、仕様書どおりに施工されているかをチェックし続ける業務です。

ここの業務量(人・時間)が、同規模のマンションの標準的な水準と比べて著しく低く抑えられている場合、「工事中のチェック体制が薄い」ということでもあり、注意が必要です。

見積書や契約書に業務量の記載がなければ、遠慮せずに開示を求めてみてください。

発注方式ごとの特徴を理解する

業者選定の話に入る前に、そもそも「誰にどう発注するか」という発注方式を理解しておく必要があります。主に4つの方式があります。

発注方式 特徴 注意点
責任施工方式 信頼できる施工会社1社に、設計から施工まで一括で発注する。コンサルタント費用が不要で、窓口が一本化され意思決定が早い。 第三者による客観的なチェックが入らないため、工事内容・金額が不明瞭になりがち。下請けへの丸投げに気づきにくい。
設計監理方式 工事を行わない設計事務所・コンサルタントが診断・設計・工事監理を担当し、施工会社は別途選定する。競争原理が働きやすく、透明性の確保を企図しやすい。 コンサルタント費用が別途必要。上述のバックマージン・癒着のリスクが最も指摘されている方式でもある。
管理会社元請け方式 長年付き合いのある管理会社に工事も一括で任せる。工事後もマンション管理と一体でフォローしてもらいやすい。 競争原理が働きにくく、金額が割高になりやすい傾向がある。
CM方式(コンストラクション・マネジメント方式) 第三者の専門家(CMr)が、設計・発注・施工の各段階を横断して管理し、工程・品質・コストを中立的な立場でチェックする。発注形態を柔軟に設計できる。 CMr自体の力量・中立性の見極めが難しく、国内ではまだ実績豊富なCM会社が限られている。

どの方式にも一長一短があり、「これが唯一の正解」という方式はありません。

あなたのマンションの理事会・修繕委員会に建築の知見がある人がいるか、過去の大規模修繕でどの方式を使い、どんな課題があったかを踏まえて選ぶことが大切です。

業者選定はどのように進むのか、一般的な流れ

国土交通省の調査資料に基づく、設計監理方式・見積合わせ方式での一般的な検討フローは、次のとおりです。

  1. 工事に向けた体制の構築:修繕委員会の設置など
  2. 工事内容の検討:劣化診断の結果をもとに、どこをどこまで修繕するか検討
  3. 発注方式の検討:前章の4方式から選定
  4. 設計コンサル会社の選定(設計監理方式の場合):業界紙での公募や管理組合団体からの紹介等で複数候補を選定し、見積金額・実績等を勘案して専門委員会の投票等で1社に絞り込み、総会決議で決定
  5. 施工会社の選定:業界紙公募や情報収集で複数候補に提案提出を依頼し、業者の基本姿勢・安全対策・住民対応・アフターケア・現場代理人の資質を審査。プレゼンテーション・質疑を経て、専門委員会の投票やスコアリングで候補を絞り込む
  6. 契約締結:総会決議

施工会社の公募では、資本金や経営規模等評価結果通知書の提出、過去数年の赤字決算の有無、同規模マンションでの施工実績、建築士・施工管理技士の配置、完成保証や瑕疵保険への加入といった応募要件を設けるのが一般的です。

この一連のプロセスには、検討開始から工事完了まで2年以上かかることも珍しくありません。「なぜこんなに時間がかかるのか」と焦る必要はなく、それだけ段階を踏むべき工事だということです。

相見積もりで実際に比較する際のチェックポイント

✓ 相見積もり比較チェックリスト
  • すべて消費税込みの総額で比較しているか
  • 「一式」表記に、数量・単価・使用材料の内訳を求めたか
  • 全社に同一の仕様書・調査結果をもとに見積もりを依頼したか
  • 実数精算方式を使う場合、想定数量(%)の根拠を確認したか
  • 価格差が2〜3割以上ある場合、その理由を各社に確認したか
  • 設計コンサルタントの業務量(特に工事監理)が開示されているか
  • 保証内容・アフターサポート・完成保証や瑕疵保険の有無を比較したか
  • 決定事項・確認事項を書面(議事録・メール)で残しているか

特に見落としやすいのが「一式」という表記です。

たとえば見積書に「外壁補修工事一式」とだけ書かれていて、具体的な補修方法・使用する材料・補修箇所の範囲が分からない場合、後から「思っていた内容と違う」というトラブルの原因になります。

数量・単価・材料の内訳を求め、各社に同一の仕様書で見積もりを依頼することで、初めて横並びの比較ができるようになります。

また、タイルの浮きの数量など、足場を組んで近づかないと正確に把握できない項目については、「全体数量に対して〇%」という仮定で見積額を算出する「実数精算方式」が使われることがあります。

このパーセンテージが実態より低く見積もられていると、工事着手後に「思ったより浮きが多かった」という理由で追加費用が高額になりやすいため、この仮定の根拠も確認しておくとよいでしょう。

事前の劣化診断で、無足場工法という選択肢もある

国土交通省の実態調査によれば、大規模修繕工事の費用内訳のうち「仮設工事」は19.2%と、外壁塗装(17.3%)を上回る大きな割合を占めています。この仮設費用の多くは、足場の設置・解体にかかる費用です。

全面的な外壁塗装工事そのものは、効率よく施工するために足場を組むのが基本ですが、その前段階で行う劣化診断(打診調査・赤外線調査)や、一部箇所だけの部分補修であれば、ロープアクセスなどの無足場工法で対応できる場合があります。

特に、大規模修繕に向けた事前の建物診断を検討している段階であれば、打診調査に加えて赤外線・ドローン調査という選択肢もあります。外壁調査、ドローンでも大丈夫?国交省が認めた赤外線調査との違い・費用を比較の記事もあわせてご覧ください。

oyazunaでは、外壁塗装・外壁補修・外壁調査それぞれについて、無足場工法に対応できる専門業者を掲載しています。大規模修繕本体の施工会社選定とは別に、事前診断や部分補修だけを依頼したい場合の相談先としても活用できます。外壁塗装の専門業者一覧外壁調査の専門業者一覧から、条件に合う業者を比較してみてください。

よくある質問

Q. 一番安い見積もりを出した業者に決めれば間違いないですか?

A. 価格だけで判断するのは避けたほうがよいでしょう。相場より極端に安い見積もりには、必要な工事項目が抜けている、後から追加費用が発生する、施工品質が低いといったリスクが潜んでいる可能性があります。実績・保証内容・現場代理人の対応力なども含めて総合的に判断することをおすすめします。

Q. 相見積もりは何社くらいから取ればよいですか?

A. 明確な決まりはありませんが、書類審査で5社程度に絞り込み、そこからプレゼンテーションや質疑を経てさらに絞り込むという進め方が、国土交通省の調査資料でも紹介されている一般的なパターンです。1〜2社だけで決めてしまうと、価格や提案内容の妥当性を判断する材料が不足しがちです。

Q. 管理会社に大規模修繕も全部任せてしまってよいですか?

A. 管理会社元請け方式は意思決定がスムーズというメリットがある一方、競争原理が働きにくく金額が割高になりやすい傾向が指摘されています。管理組合として一度、他の発注方式や外部の専門家によるセカンドオピニオンも検討したうえで判断すると安心です。

Q. 不安な場合、どこに相談すればいいですか?

A. 国土交通省は、(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」(0570-016-100、見積もりチェックサービスも無料で実施)や、(公財)マンション管理センター(03-3222-1519)といった公的な相談窓口を案内しています。理事会・修繕委員会だけで抱え込まず、こうした窓口や第三者の専門家に相談することも選択肢に入れてください。

まとめ

マンションの大規模修繕は、専門知識がない管理組合と、専門知識を持つコンサルタント・施工会社との間に情報の非対称性が生まれやすく、それゆえに国が公式に注意喚起するほどのトラブルが起きてきた分野です。

発注方式ごとの特徴を理解し、「一式」表記や不自然な価格差といった要注意サインを押さえたうえで、複数社から同一条件の相見積もりを取ることが、後悔しない業者選定の土台になります。

一人で、あるいは理事会・修繕委員会だけで判断せず、公的な相談窓口や第三者の専門家の力も借りながら、時間をかけて進めてみてください。

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