外壁調査、ドローンでも大丈夫?国交省が認めた赤外線調査との違い・費用を比較

外壁調査、ドローンでも大丈夫?国交省が認めた赤外線調査との違い・費用を比較
オヤズナ編集部代表
監修者

オヤズナ編集部代表

オヤズナ編集部代表

高所ロープ専門の窓ガラス清掃、外壁塗装会社を専門に調査・比較する業界特化型プラットフォーム「オヤズナ」の運営者です。
高所ロープ会社での勤務経験を有し、現場視点と業界理解をもとに情報発信を行っています。また、労働安全衛生法に基づく高所作業関連講習を修了しており、安全管理および高所作業に関する基礎知識を有しています。
オヤズナでは、各社の公式サイト・公開情報・施工実績情報をもとに、「安全性(保険加入・資格情報)」「実績(創業年数・施工事例)」「対応力(エリア・階数・緊急対応)」などの独自基準でデータを整理・比較。これらのオリジナルデータベースをもとに、公平性と透明性を重視した記事制作および情報監修を行っています。

「外壁調査、ドローンでもちゃんと調べられるんだろうか」
このような不安を感じてはいませんか?

建築基準法12条点検の対象になっている建物では、外壁の全面打診等調査がおおむね10年に一度義務付けられています。足場を組んでの打診調査が原則的な方法ですが、近年は「赤外線調査」「ドローンによる赤外線調査」という選択肢も広がってきました。

費用も工期も抑えられると聞く一方で、「本当に打診と同じくらい信頼できるのか」「国が正式に認めている方法なのか」という点が気になるのではないでしょうか。

結論から言うと、ドローンによる赤外線調査は令和4年(2022年)1月18日の告示改正により、国土交通省が正式に認めた調査方法です。

ただし「無条件に打診と同じ」というわけではなく、一定の要件を満たして初めて認められる、という条件付きの話でもあります。

この記事では、打診・赤外線・ドローン赤外線という3つの調査方法の違い、費用相場、そして発注前に確認しておきたいポイントを、国土交通省の公式情報をもとに整理します。

外壁調査には3つの方法がある

外壁のタイルやモルタルの浮き・剥離を調べる方法は、大きく3つに分けられます。

  • 打診調査:テストハンマーや打診棒で外壁を叩き、音の高低で浮きを判別する方法。足場・ゴンドラ・高所作業車・ロープアクセスなどでアクセスして行います。
  • 赤外線調査(地上設置型):外壁の温度差を赤外線カメラで検知する方法。浮いている部分は内部に空気層ができるため、健全な部分より表面温度が高くなる(または低くなる)現象を利用します。
  • ドローンによる赤外線調査:地上型と原理は同じですが、ドローンに赤外線カメラを搭載して上空から撮影します。足場を組めない高層階や複雑な形状の壁面でも、死角なく撮影しやすいのが特徴です。

赤外線調査の原理をもう少し具体的に説明すると、外壁のタイルやモルタルが太陽の熱で温められたとき、健全な部分は熱がスムーズにコンクリート躯体へ伝わっていきます。

ところが浮き・剥離が起きている部分は、仕上げ材とコンクリートの間に熱を伝えにくい空気層が挟まっているため、熱が逃げにくく、表面温度が周囲より高くなります。

この温度差を赤外線カメラで可視化し、浮きの位置を特定するのが赤外線調査の基本原理です。晴天で日射がしっかり当たっていることが前提の調査方法だ、という点をまず押さえておいてください。

このうち、あなたの選択肢として最近増えているのが「赤外線調査・ドローン調査は本当に法定調査として使えるのか」という疑問です。次の章で、国の公式な立場を確認していきましょう。

2022年1月、国土交通省がドローンによる赤外線調査を正式に認めた

外壁のタイル・石貼り・モルタル等の劣化状況の調査方法は、平成20年国土交通省告示第282号で「おおむね6ヶ月から3年以内に一度の手の届く範囲の打診等」に加え、「おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等」を行うこととされています。

この告示が、令和4年(2022年)1月18日付けで一部改正されました(令和4年国土交通省告示第110号、施行は同年4月1日)。

改正により、打診以外の調査方法として「無人航空機(ドローン)による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するもの」が明確化されています。(地上に設置した赤外線装置による調査も、同じ扱いです。)

告示改正の要点
令和4年(2022年)1月18日、平成20年国土交通省告示第282号が一部改正(令和4年国土交通省告示第110号、施行は同年4月1日)。
「無人航空機(ドローン)による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するもの」が、外壁の全面打診等調査の正式な方法として明確化されました。
出典:国土交通省公式サイト「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」

「打診と同等以上の精度」の中身を確認する

ここで見落としてはいけないのが、告示が認めているのは「無条件のドローン調査」ではなく、「打診と同等以上の精度を有するもの」という条件付きの調査方法だという点です。

この精度の判定基準は、一般財団法人日本建築防災協会が設置した委員会がまとめた「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」(令和4年3月)に定められています。

ガイドラインが求めている主な要件は、次のとおりです。

  • 実施体制:外壁調査実施者(特定建築物調査員や建築士)が全体を統括し、赤外線調査実施者・ドローン調査安全管理者・操縦者がそれぞれの役割を担う、複数人体制での実施が前提になっています。
  • 気象条件:晴れ・晴れ時々曇りは実施可能ですが、曇り時々晴れ・曇り一時晴れは困難、曇り・雨・雪は不可とされています。太陽光による温度差がなければ、そもそも浮きを検知できないためです。
  • 撮影角度・距離:仰角・水平角ともおおむね30度以内(やむを得ない場合でも45度程度まで)、かつ100mm四方を4画素程度で撮影できる距離での撮影が求められます。
  • 打診との併用:調査に先立って、手の届く範囲の同一部位で打診とドローン赤外線調査を実施し、両者の結果を比較検証することが必要とされています。つまり「ドローンだけで完結」するのではなく、部分的には必ず打診で裏取りをする設計になっています。

実は、打診法と赤外線法(地上・ドローンいずれも含む)は、そもそも浮きを検知する原理が異なります。打診は打音という物理的な反応を直接聞き取るのに対し、赤外線は温度差という間接的な指標から浮きを推定する方法です。

国内のインフラメンテナンス関連の技術資料で報告されているある実証実験では、打診法を基準にした場合の赤外線法(ドローン搭載型・地上設置型とも)との一致率は5割前後にとどまったという結果も示されています。

一方で、ドローン搭載型と地上設置型の赤外線装置同士の一致率は97%と高く、赤外線法同士では近い結果が出ることも分かっています。

この事実は「赤外線・ドローン調査が使えない」ということを意味するわけではありません。

国が定めたガイドラインの要件(適切な実施体制・気象条件・打診との併用検証など)を満たして初めて「同等以上の精度」と判定される、という制度設計になっている、という理解が正確です。

逆に言えば、これらの要件を満たさない自己流の調査では、精度が担保されない可能性がある、ということでもあります。

費用・工期を比較する

気になる費用感を見ていきましょう。複数の外壁調査専門業者が公開している情報を突き合わせると、おおむね次のような相場観が見えてきます(業者・建物条件によって差があるため、あくまで目安としてご覧ください)。

調査方法 費用目安(㎡単価) 調査期間の目安 足場等の要否
打診調査(足場・ゴンドラ・ロープ等) 250〜700円程度+仮設費 数日〜数週間(大規模建物は1ヶ月以上のことも) 必要
赤外線調査(地上設置型) 120〜400円程度 1〜数日 不要(ただし高層部の精度は低下しやすい)
ドローンによる赤外線調査 120〜600円程度 1〜3日程度(解析・報告書作成に別途1〜3週間) 不要

具体的な事例で見ると、ある専門業者の公開情報では、外壁面積2,000㎡・10階建てビルの場合、足場を組んだ打診調査で200〜500万円かかるのに対し、ドローンによる赤外線調査は30〜80万円程度で済んだという例が紹介されています。

また別の業者の実例では、15階建て2棟・約250世帯のマンションで、ゴンドラを使った打診調査の見積もりが約497万円だったのに対し、ドローン赤外線調査は約78万円だったという公開データもあります。

いずれも個別の業者・案件の一例であり、業界標準の数値として断定できるものではありませんが、「足場・ゴンドラを使う打診」と「赤外線・ドローン」の間には、費用に数倍の差が出るケースが少なくない、という傾向は複数の情報源で共通しています。

なお、打診調査は仮設方法(足場・ゴンドラ・ロープアクセス・高所作業車)によってもコストが大きく変わります。

仮設に足場を使わないロープアクセス工法であれば、打診調査自体の精度は保ちながら、足場を組む場合より費用を抑えられる場合があります。

「ドローンか打診か」の二択ではなく、「打診の中でもどの工法を使うか」という選択肢も、あわせて検討する価値があります。

赤外線・ドローン調査が苦手とする条件がある

赤外線調査・ドローン調査には、構造上どうしても精度が落ちる、あるいは実施自体が難しい条件があります。発注前に、あなたの建物がこれに当てはまらないか確認しておくことをおすすめします。

赤外線・ドローン調査が苦手な条件
  • 北面や終日日陰になる壁面(温度差が生じにくい)
  • 隣接建物の影になる低層部・狭い路地に面した壁面
  • アルミパネル・ガラスカーテンウォールなど反射率の高い素材
  • 凹凸やひさしが多く、撮影角度が制限される複雑な形状の外壁
  • 目安10cm角未満といった、ごく微細な浮き・初期段階の浮き
  • 曇り・雨・雪の日(晴れまたは晴れ時々曇りが前提)

これらの条件に当てはまる壁面がある場合、赤外線調査だけで済ませるのではなく、該当箇所だけ打診で補うハイブリッド方式を採用している業者も存在します。

「うちの建物は赤外線調査に向いているのか」は、図面や現地確認によって業者ごとに判断が分かれる部分でもあるため、複数の業者に一度確認してみることをおすすめします。

誰が調査を実施できるのか

ガイドラインが求める実施体制は、次の4つの役割で構成されています。

  • 外壁調査実施者:調査全体を統括し、最終的な「浮き」等の判定を行う責任者。1級・2級建築士、または特定建築物調査員資格者証の交付を受けている者に限られます。
  • 赤外線調査実施者:熱画像の撮影・分析・判定を行う担当者。建築物および赤外線調査に関する十分な知識と実務経験が求められますが、これ自体に国家資格が必須というわけではありません。実務上は「赤外線建物診断技能師」という民間資格の保有者が担当することが多いようです。
  • ドローン調査安全管理者:ドローンの飛行可否判断・安全管理を統括する担当者。建築物調査とドローン飛行の両方の知識が必要とされます。
  • 操縦者:実際にドローンを操縦する担当者。2022年12月5日から国の無人航空機操縦者技能証明制度(一等・二等)が始まりましたが、この国家資格自体は外壁調査の法的な必須要件ではありません。ただし資格を保有していると、後述する飛行許可・承認手続きの一部が簡略化されるという実務上のメリットがあります。

つまり、「ドローンを飛ばせる人」がいれば足りるわけではなく、建築士や特定建築物調査員が全体を統括する体制が前提になっている、という点が重要です。

見積もりを取る際は、この体制が明記されているかを確認するとよいでしょう。

ドローンを飛ばすこと自体にも許可が必要になる場合がある

意外と見落とされがちですが、ドローンによる外壁調査は、航空法上の「特定飛行」に該当することがほとんどです。

都市部のビル・マンションは人口集中地区(DID)の上空に立地していることが多く、加えて外壁調査は建物からごく近い距離(30m未満)で撮影するため、原則として国土交通省への飛行許可・承認申請が必要になります。
(無許可での飛行は50万円以下の罰金の対象です。)

実施を決めてから調査日まで、飛行許可の審査だけで数週間程度かかるケースもあります。

「すぐに調査してほしい」という場合は、依頼先の業者がすでに飛行許可を取得済みかどうか、確認しておくとスケジュールの見通しが立てやすくなります。

継続的に案件を受注している業者であれば、個別の物件ごとに申請するのではなく、1年間分をまとめて取得できる「包括申請」の許可を持っていることも多く、この場合は個別の申請待ちが発生しにくいというメリットもあります。

打診にはない、赤外線・ドローン調査ならではのメリット

費用面だけでなく、次のようなメリットも見逃せません。

  • 入居者・テナントへの影響が少ない:足場を組むとベランダでの洗濯物干しなど、住んでいる方の生活に影響が出ます。ドローン・地上型の赤外線調査であれば、こうした影響を大きく減らせます。
  • 建物を傷つけない非破壊調査:打診はハンマーで叩く調査のため、ごくまれに仕上げ材を傷める可能性がありますが、赤外線調査は非接触で行えます。
  • 熱画像データとして記録が残る:打診調査の記録は写真と調査員の手書きメモが中心になりがちですが、赤外線調査は熱画像をデジタルデータとして保存できます。次回の調査結果と比較して、劣化の進行を定量的に把握しやすくなる、という長期的なメリットもあります。
  • 高所作業そのものがなくなる:ドローン調査であれば、墜落・転落といった高所作業特有のリスクを負う人がいなくなります。安全面でも大きな違いです。

発注前にチェックしておきたいポイント

✓ 発注前のチェックリスト
  • 外壁調査実施者(1級・2級建築士または特定建築物調査員)が全体を統括する体制になっているか
  • 日本建築防災協会の外壁調査ガイドラインに準拠した実施体制(赤外線調査実施者・ドローン調査安全管理者・操縦者)が明記されているか
  • 手の届く範囲での打診との併用検証を行う工程が見積もりに含まれているか
  • ドローンの飛行許可・承認を取得済みか、または取得にかかる期間の見通しが示されているか
  • 賠償責任保険・機体保険に加入しているか
  • 北面や複雑な形状の壁面がある場合、打診との併用など個別の提案があるか

結局、どの調査方法を選べばいいのか

ここまでの内容を踏まえると、判断の軸は次のように整理できます。

  • 費用・工期を優先し、建物の壁面が比較的シンプルで日射条件も良い場合:ドローンによる赤外線調査は、ガイドラインの要件を満たした業者であれば有力な選択肢になります。特に高層・大規模な建物ほど、打診との費用差が大きくなる傾向があります。
  • 北面が多い、隣接建物が近い、複雑な形状の壁面がある場合:赤外線調査だけでは精度が担保しにくいため、打診との併用、またはロープアクセスなど足場を使わない打診工法を軸に検討する方が現実的です。
  • 微細な浮き(10cm角未満など)まで確実に拾いたい、補修工事の詳細な設計まで見据えている場合:熟練者による打診調査の精度が、現時点では最も信頼性が高いとされています。

どの方法が最適かは、建物の形状・仕上げ材・立地条件によって変わります。

「うちの建物ならどの方法が向いているか」を判断するためにも、まずは複数の業者から現地調査を含めた見積もりを取り、体制・精度・費用のバランスを比較してみることをおすすめします。

oyazunaでは、ロープアクセス等の無足場工法による打診調査や赤外線・ドローン調査に対応できる企業を掲載しています。外壁調査の専門業者一覧から、あなたの建物の条件に合う業者を比較してみてください。

なお、建築基準法12条点検そのものの対象建物・周期・罰則については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
建築基準法12条点検とは?外壁調査の対象・周期・罰則をわかりやすく解説

よくある質問

Q. ドローンによる外壁調査は、建築基準法12条点検にそのまま使えますか?

A. 告示上は、ガイドラインが求める実施体制・気象条件・打診との併用検証などの要件を満たしていることを前提に、正式な調査方法として認められています。ただし実際に定期報告として受理されるかどうかは、対象建物を管轄する特定行政庁の判断に委ねられる部分もあるため、依頼前に一度確認しておくと安心です。

Q. 「赤外線建物診断技能師」は必須の資格ですか?

A. 国家資格ではなく、ガイドライン上も必須の要件とはされていません。ただし、赤外線調査の解析には専門知識が必要になるため、多くの専門業者がこの民間資格の保有者を担当者として配置しています。見積もり時に確認してみるとよいでしょう。

Q. 12条点検以外の目的でもドローン赤外線調査は使えますか?

A. はい。マンションの大規模修繕を計画する際の事前調査や、雨漏りの原因箇所を特定するための調査など、法定点検以外の目的でも広く使われています。修繕計画の予算を早い段階で把握したい場合にも役立ちます。

Q. 悪天候が続くとどうなりますか?

A. ガイドライン上、曇り・雨・雪の日は実施不可とされているため、天候不順が続くと調査日程が後ろ倒しになることがあります。梅雨時期や台風シーズンに調査を予定している場合は、スケジュールに余裕を持たせておくことをおすすめします。

まとめ

外壁調査におけるドローン・赤外線調査は、2022年1月の告示改正により、国土交通省が正式に認めた調査方法です。

ただし「打診と無条件に同等」なのではなく、日本建築防災協会のガイドラインが定める実施体制・気象条件・打診との併用検証といった要件を満たして初めて認められる、条件付きの調査方法だという点を押さえておく必要があります。

費用・工期の面では打診調査より大きく抑えられる可能性がある一方、北面や反射素材の多い壁面、複雑な形状の建物では精度が落ちやすいという弱点もあります。

「うちの建物にはどちらが向いているのか」を一人で判断せず、実施体制やガイドライン準拠の有無を明示できる業者に、現地を見た上での提案を求めることが、後悔しない選び方につながります。

無料で現調依頼する